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【質問】
病院検査室に勤務しています。以前まで, 髄液や胸水, 腹水などの穿刺液の培養には固形培地と血液培養ボトルを使っていましたが,
今回自動血液培養装置を導入した際に, コストのことも考慮して半流動培地を増菌培養に使うことにしました。そこで教えていただきたいのですが,
「半流動培地に穿刺液を接種する時, どのくらいの量をどのように接種したらよいでしょうか」。調べてみたところ,
検体を吸い上げたパスツール・ピペットを培地の底まで刺し入れ, 検体を少しずつ出しながら,
ピペットを徐々に引き抜いて培地全層に接種するとありましたが, パスツール・ピペットからどのように検体を培地中に出したらいいのでしょうか???
また, ディスポのスポイトなどで代用することは可能でしょうか。初歩的なことかもしれませんが,
よろしくお願いいたします。
【回答】
チオグリコレート培地などの半流動培地への接種法についての質問と思いますが,
これらの培地では, 好気性菌が上層部でのみ発育, 嫌気性菌が下層部でのみ発育,
通性嫌気性菌は培地全面に発育, 微好気性菌は培地表面よりやや下の限られた区域のみ発育するという特徴があります。つまり幅広い発育条件を持つ菌をひとつの培地で培養することになります。ですから質問にもあるように“パスツールピペットを培地の底まで刺し入れ,
検体を少しずつ出しながら, ピペットを徐々に引き抜いて培地全面に接種”することによって培地の底から表層部まで満遍なく検体を植えつけるわけです。接種量は必然的に底から表層部まで満たすために必要な量ということになります。しかし必ずしも十分量の検体が得られるとは限りませんので,
検体の全体量から寒天平板培地に接種する量と塗抹標本作成に必要とする量などを差し引いた量を接種することになります。量が少ない場合には,
ピペット中の検体の残量を目で確認しながら, ピペットから押し出す量を加減して表層部まで持っていきます。ここが“検査技師の腕の見せ所???”かもしれません。ただし,
十分量の検体があるからといって多く接種し過ぎるのも良くありません。培地量とのバランスも見ながら接種する必要があります。仮に抗菌薬が投与されていた場合,
抑制されて半流動培地に発育しないこともあります。まずは実際にパスツールピペットを用いて半流動培地に検体を接種してみてください。何度か実施するうちに“コツ”がつかめるものと思います。
ディスポのスポイトなどで代用することは可能でしょうか???
半流動培地は底部の嫌気状体を保つため, 細長く深めの試験管に入っています。この試験管の底まで届く細長いピペットとしてはパスツールピペットが最適であると思います。通常のディスポピペットでは長さが足りないと思います。パスツールピペットと同じような形状の,
滅菌されたディスポ製品であれば使用できるかも知れません。
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