07/11/01
07/11/02
■ 試料採取には1-mlピペット??? 2-mlピペット
【質問】
 いつも拝見させていただき, 色々勉強させていただいております。今回細菌検査サンプルの摂取方法について課内で議論になり, 先生のご意見をいただきたいです。

 私の会社では混釈法で検査を行い, メスピペットでサンプルを1 ml採取して2枚ずつシャーレに撒いています。そのメスピペットについてなのですが・・・

 1-mlのメスピペットを使用して, 2回採取し, 撒くのがいいのか, 2-mlのメスピペットを使用して, 1回で採取して撒くのがいいのか, どちらがよいのでしょうか。1-mlのピペットで2回サンプルを取ったほうが菌を拾う可能性が高くなる。

 という意見と , 2-mlのピペットで1回サンプルを取り, 撒いたほうがコンタミの可能性が低くなるという意見があります。どちらがいいのか正直わかりません。よろしくお願いします。

【回答】
 法律とか, 規則とか, ガイドラインとかをすべて忘れ, 検査技術あるいは検査技能という側面のみから回答すると,“まぁ, お好きにしてください”となります。1 mlを2回分注するのに, 1-mlのピペットを選ぶか, 2-mlのピペットを選ぶかという問題は, 結局, 検査を担当する方の技量と求める検査の精度 (さらに加えるなら, 検査を担当する方の負担, 根気, スピード, 経費などもあるでしょう) から選択されるものと思います。1-mlとか2-mlという設定ではなく, 0.1-mlと10-mlのピペットという選択で考えてみては如何でしょう。1 mlを分注するのに0.1-mlで10回・・・極めて正確に1 mlが分注される筈です (0.05 ml・・ピペット全体の半分の長さの液量の違いは充分識別できます)。10-mlのピペットで1回・・・しかし10-mlのピペットでどの程度正確に1.00 mlを計ることができるかは検査を担当する方の技量次第です。でもピペットを1回吸えば, 1 mlを10回も反復して分注できます。

 検査精度に関して言えば, 細菌の世界は10倍希釈の世界だと認識しています。甚だしく言えば, 1 ml分注するところを1.2 ml (1.2倍) 分注しても結果は変わらない世界です。コンタミ (雑菌の混入) に関して言えば, 0.1-mlのピペットで10回分注してコンタミするかしないかは検査を行う者の技量 (匠の技) が決定的要因です。また, 選ぶピペットの容量の差が小さくなればなる程, 正当な理由での選択に苦慮するのは当たり前です (だんだん理由が曖昧になるという意味)。

 いろいろな要因を充分に吟味して, 選んでください。ひとつの選択にはいつも, 得られる部分 (長所) と失う部分 (短所) が共存していると考えてください。むしろ, そのような議論をすることこそ, 検査の質と限界を正しく認識できる機会があると思います。それと, 検査を担当する方は“匠の技”を追求してください。かつて私達は1-mlのピペットを使って, どの程度正しく色素液の2倍希釈系列が作れるか (後で分光光度計で実測), ガラス板に滴下した液を用いたピペットでの希釈系列の作成など, “匠”を極めようと努力したものです。

(琉球大学・山根 誠久)


【質問者からのお礼】
 ご丁寧な回答ありがとうございました。 上司に回答していただいたのを見せて議論した結果, 1 mlを2回採取することになりました。自分自身も納得できましたし, 一層検査技術を追求しなければと思いました。ほんとにありがとうございました。


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