08/03/06,12
■ 食品原材料中の真菌濃度
【質問】
 ●●で品質管理を担当している■■と申します。

 弊社では◆◆を発酵処理し, その後発酵停止, 乾燥粉末したものを原料として出荷しております。これはクッキーやドリンク (粉末タイプ), タブレットの原料として使われております。品質管理としては, 一般生菌, 大腸菌群, 真菌を測定しておりますが, これまで真菌については規格基準を“0個/gram”としておりました。これは, 原料提供先の内の1社が0個を求めていたためです。そのため, 1個検出されたものも出荷ができない状態のため, 他社については規格基準値の設定の見直しを検討しております。ドリンクなど, 加熱しないものに関しては0個/gramにする必要があるか(???) とも思うのですが, クッキーなどの製造工程で加熱するものに関しても, 厳しくする必要があるのでしょうか???

この点, 「食品衛生法」ではどのようになっているのか気になり, 厚生労働省に問い合わせたところ, 地元の保健所に聞いて下さいとのことでしたので, 保健所に問い合わせしたところ, 自分で調べて下さいとのことでした。そこで, 「食品衛生小六法」を購入して調べてみたのですが, 特に明記されておりませんでした。真菌の基準は0個/gramでないといけないのか (300個/gram以下ではいけないのか), 「食品衛生法」に抵触しないのかどうかがわかりませんので, ご教授の程よろしくお願い致します。

【回答】
 質問者の会社で製造している食品原料から真菌が分離され, 取引先の要求, 0個に対応できないために社内基準を変更するための根拠として, 「食品衛生法」に抵触しないというところにその根拠を求めたいのですね。「食品衛生法」には真菌の基準はないと思います。真菌自体は有害ではありませんが, 真菌が産生するマイコトキシンが人体に有害です (国内のカビ毒に関する問題として黄変米やピーナッツバーなどがありました)。真菌と食品との関係を考えますと, 消費者が目でみて真菌 (カビ) が食品に存在する時, クレームになる場合が大多数です。また, 真菌は地球上の至る所に存在するため, 製造から最終製品までを真菌に接触させないようにするのは至難の業で現実的ではありません (滅菌工程や無菌ラインが必要です)。野菜や果物について真菌を検査しますと, ほとんどの物から真菌が検出できます (検出されなかった場合は, むしろ農薬やその他の薬剤が付着しているのではないかと疑ってしまいます)。以上のことから, 回答者の経験上, 取引先が真菌“0 (ゼロ)”を要求してくること自体が信じられません。質問者は, 取引先とよく話し合い, 要求してくる根拠と本当に真菌が“0 (ゼロ)”でないといけないのかどうかを再確認してください。

 近年, 数多くの食品で脱酸素剤が使われていますが, 脱酸素剤は包装中の酸素濃度を低くして, 真菌の増殖力を弱めることに役立っています。また, 一般的に食品メーカーは原料段階から微生物汚染の少ないものを求めるのは常道と思いますが, 厳し過ぎるとかえって原料の入手が困難になり, 最終製品が作れなくなり, 結局会社を存続できなくなります。

(日水製薬・小高 秀正)


【質問者からのお礼】
 ご回答いただきありがとうございました。あれから取引先と話し合い, 真菌数の見直しを行いました。これからも日々勉強をしていきますが, わからないことがありましたら質問させていただきたいと思いますので, よろしくお願いいたします。


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