09/12/14
■ 食品のカビ・酵母検査用培地
【質問】
 私は, 弁当・惣菜製造会社の品質管理室で微生物検査を担当している者です。転職して半年が経ち, 真菌検査用の培地について疑問が生じ, ご質問致しました。わが社では「漬物の衛生規範」に概ね基づいてカビ・酵母を検査しています。調整法を以下に記します。

(1) PDA培地, クロラムフェニコール (100 mg/L), 酵母の場合はこれに加えNaCl (50 g/L), プロピオン酸ナトリウム (2 g/L) を秤量し, 必要量の水を加え, 加温溶解する。
(2) 121℃, 15分間滅菌し, 冷却後シャーレに平板して使用する。

 ここでふたつ質問があります;

(1)「漬物の衛生規範」の真菌数試験法では, カビ・酵母, どちらの場合も培地のpHを5.4に調整すると記載されていますが, わが社では“pH調整”を行っていません。試しに滅菌後の各培地のpHを測定したところ, 約pH 5.8でした。漬物以外の弁当の具材や惣菜中のカビ・酵母を検査する場合は, pHを調整しなくても大丈夫でしょうか??? もしpHを調整する必要があるなら, 滅菌前に調整してから滅菌するという方法でも大丈夫でしょうか???

(2) 酵母の培地として, PDA培地にNaCl, クロラムフェニコール, プロピオン酸ナトリウムを添加しています。しかし,「食品衛生検査指針2004」421頁, 酵母の分離培地の調製例を見ますと, YM寒天培地にクロラムフェニコールとプロピオン酸ナトリウムを添加し, NaClは添加していません。「漬物の衛生規範」記載の酵母培地は, 好塩性の酵母を分離するためにNaClを添加しているのでしょうか??? もしその目的でしたら, 漬物以外の食品中の酵母を検査する場合はNaClを添加しなくてもよいのでしょうか???

 長文となってしまい申し訳ありません。是非ご回答して頂けますよう, よろしくお願い致します。

【回答】
 (1) pHを調整する理由は, 多くの細菌の発育を抑制するためです。クロラムフェニコールは, 細菌の発育を抑制するため, クロラムフェニコールを添加する場合は, pHの調製は必要ありません。pHを調整する場合は, 滅菌した10%酒石酸溶液で, 培地滅菌後に行ってください《ポテトデキストロース寒天培地「ニッスイ」(顆粒)のラベル: 菌数計算でほかの細菌の発育を抑制する必要がある場合は, pH 3.5±0.1に補正 (滅菌した10%酒石酸溶液を培地滅菌後に加える) するとよい。》この場合, 予備実験が必要です。培地100 mlを何本か用意し, 滅菌します。その後, 滅菌10%酒石酸溶液を1 ml, 2 ml, 3 ml, 5 ml, 10 ml, 20 mlと適当に添加して, 固化後に培地のpHを測定します。10%酒石酸溶液量と培地pHから検量線を作成し, 自分の望むpHになる10%酒石量を決めておきます。

(2) ポテトデキストロースへNaCl (50 g/L) を添加するのは, 質問者の会社で, 漬物などの食品からの酵母検出を目的としているのではないでしょうか (質問者が入社する前に, 好塩性の酵母による問題などがあったため, NaClを添加しているのではないかと推測しました)。

(日水製薬・小高 秀正)

【質問者からのお礼】
 この度はお忙しい中, ご回答頂き誠にありがとうございました。疑問だった理由がはっきりとし, 確信を持って仕事に取り組んでいくことができました。今後も勉強して更なる細菌検査の理解に努めたいと思います。


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