07/01/30
07/01/31
■ 植菌テストについて
【質問】
 私は食品会社で細菌検査を担当する者です。いつも参考にさせていただいております。今回, 食品添加物の効果テストで, “植菌テスト”を考えております。菌種は乳酸菌, 大腸菌群, バチルスで, それぞれの菌種に対して添加物がどの位効果があるのかをテストしてみようと思います。方法は下記のように考えております。

1. 菌液の調整
(1) 指標菌1白金耳をBHIブイヨンにて一晩, 35℃で増菌させる (増菌後菌数 = 約10^8)。
(2) 滅菌生理食塩水に浮遊させ, 100個/ml程度の菌液を調整する。

2. コントロール菌数の確認
(1) 調整した菌液をシャーレに分注し, 標準寒天培地でコントロールの菌数の確認を行う。調整した菌液はそのまま翌日まで冷蔵保管する。
(2) コントロールの菌数が100個/mlかどうか確認する。もし“ブレ”が生じているようであれば, 調整し直す。
(3) 菌数の確認のとれた菌液を用いて植菌テストを行う。

3. 植菌方法
(1) 効果を確認したい添加物を添加して調理したサンプルを10.0 gramに計量したものを3つ用意する。
(2) (1)で計量したものに, バチルス, 乳酸菌, 大腸菌群, それぞれの菌液を200μlずつ, 満遍なく添加する。

4. 検査方法
(1) 添加直後, 25℃で16時間後, 25℃で40時間後で保存検査する。検査時は全量をサンプリングする。

 このような方法でテストしてみたのですが, 始めの菌数の調整がなかなかうまくいきません。思うような菌数にならず, 多過ぎたり, 少な過ぎたりしてしまいます。うまく調整するにはどのようにしたらいいのでしょうか???

 また, “植菌テストの方法”ですが, このような方法でよろしいのでしょうか??? 色々調べましたが見つからないので, 他にいい方法や公的な方法などがありましたら教えてください。よろしくお願い致します。

【回答】
 100個/ml程度に菌数を調製する方法は, 元の菌液中の菌数を把握することです。多くの場合, 一定条件の菌数は大きくずれません。希釈方法や実験手技を再確認してください。バチルスの場合は芽胞液を使うのが一般的です。食品添加物の効果を食品で実験する前に, 各食品添加物の最小発育阻止濃度 (MIC) を測定して下さい。その後で質問者の実験したい食材を使って実験してください。その場合, その食品添加物がどのような目的で使われるかを考えることが必要です。例えば, 食品製造工程中での雑菌に対して抑制作用がある場合, 原料から最終製品の食品製造過程のどの段階で実験供試菌を混入させるかということが重要です。回答者が蒲鉾に使われるソルビン酸について実験した時は, 原料のすり身にバチルスを混入させ, 通常の蒲鉾の製造工程を経て最終製品まで作り, 保存テストをしました。

 それと“始めの菌数の調整がなかなかうまくいきません”という部分に追加しますが, 一般的に食品微生物における菌数はオ−ダ−で論じます。100個/mlの場合は, 10〜1000個の間に入ればよいと考えます。さらに高い精度を望むなら, 2×標準偏差を考えて80〜120個の範囲がベストです。最初の接種菌数がいくつであるのかを把握すればよいと考えて上の回答を書きました。食品添加物の効果を確認するということなので, 初発菌数と比較してどうかという比率での判断ができればよいと考えました。

また, 食品添加物の効果は, 保存温度によっても変わってきますので, 菌接種後の保存温度は25℃だけではなく, 夏の30℃や冷蔵庫の4℃も同時に実験した方がよいと思います。さらに, 質問者から厳密に100個/mlの菌液を作りたいという質問があるとすれば, 何故100個/mlにこだわっているのかを知る必要もあります。例え100個/mlの菌液を100 ml調整したとしても, その菌液から1 mlを採取しても正確に, いつも100個になるとは限りません。そういう世界だということも理解してください。

(日水製薬・小高 秀正)


【質問者からのお礼】
 ご丁寧な回答ありがとうございました。大変参考になりました。


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