![]() |
■ 小児の鼻腔から大きなグラム陰性桿菌 |
【質問】
●●病院の■■と申します。いつも参考にさせて頂いております。初歩的な質問をさせていただきます。 小児の鼻腔から, かなり大きいグラム陰性桿菌が鏡検でみられることがあります。コロニーは小さいく, 簡易キットを使用しても菌名がでませんでした。 大人ではあまり見たことがないような気がしますが, どのような菌種なのでしょうか??? よろしくお願いいたします。 【回答】
グラム陰性の大型桿菌: 染色以外の方法で真にグラム陰性桿菌であることの確認が必要です。例えばRyu test (「質問箱」に方法が記載されています)やマッコンキー培地などのグラム陰性菌選択培地での発育を確認して下さい。鼻腔に常在するBacillus属がグラム陰性の大型桿菌に染色される場合があります。 コロニーが小さい: どんな種類の培地での集落でしょうか。非選択培地 (血液寒天, チョコレート寒天培地など栄養強化培地) と選択培地/低栄養培地などでの集落を比べてみて下さい。またこれらの培地を, 通常大気培養, 炭酸ガス培養, 嫌気培養など, 施設で可能ないくつかの培養環境で培養して下さい。培地/培養環境の結果からも菌種が推定できる場合が多いです。 簡易キットでは同定できない: オキシダーゼ試験, カタラーゼ試験, 酸化・発酵試験, 運動性試験などを先に実施して下さい。比較的簡単な試験結果を基に菌種が推定できる場合が多いです。 最後に今回の菌種同定と関連しますので追記します。今回の検査材料は鼻腔です。臨床微生物検査における鼻腔から検出対象とする菌種は, 保菌調査でNeisseria meningitidis , Staphylococcus aureus, 感染症診断の対象ではBordetella spp, Corynebacterium diphtheriae, Chlamydia pneumoniae, 小児の薬剤耐性疫学調査ではStreptococcus pneumoniaeが検査対象になります。鼻腔は環境に接する部位ですので, 環境中の菌種 (臨床的に無意味な菌種) も検出されます。このことから, 特殊な事情がない限り, 鼻腔材料からの検査対象菌種は限定することです。個人的興味ということでしたら, 根性を決めて, 広汎な細菌学の知識と経験を駆使して菌種の同定を試みることになります。 (琉球大学・仲宗根 勇)
|