07/06/12
Staphylococcus epidermidisをその他のCNSと鑑別する方法
【質問】
 はじめて質問させて頂きます。●●県の微生物検査を担当しています臨床検査技師です。

 Staphylococcus epidermidisとその他のCNSを区別できる性状は何かないでしょうか??? 生化学的性状, 抗菌薬の耐性など何でも良いので, キットに入れずに簡単に区別できる方法を教えて下さい。よろしくお願い致します。

【回答】
 Integrated Taxonomic Information SystemでStapylococcu属を検索すると, 現在39菌種が含まれ, このうち10菌種は亜種が掲載されています。これらの分類手法はDNA相同性が主体であることから, 生物学や生化学的検査法による同定では矛盾点もでてきます。しかし, 臨床検査分野で日常検出される細菌については数値同定 (自動機器やキット類) が用いられ, 完全同定とは言えないまでも, 概ね良好に判断されています。これをさらに簡易的 (キットを用いないで) にして, Staphylococcus epidermidisとその他のCNSを区別するとしたら, 属および一次鑑別レベルまでの検査 (グラム染色と形態, 運動性, 温度と酸素の発育性, オキシダーゼテスト, カタラーゼテスト, コアグラーゼテスト) に加え, VPテスト, フォスファターゼテスト, アルギニン加水分解テスト, ウレアーゼ分解テスト, マルトース分解テスト, トレハロース分解テストおよびノボビオシン感受性テストで大別することになります。これらの培地作成などの煩雑性を考えるとキット使用が便利ではないでしょうか。

 さて, ここで大切なことは「Staphylococcus epidermidisとその他のCNSを区別する」目的です。詳細な疫学統計, 院内感染対策サーベイランス, 薬剤耐性機構の分析, 分類学などの特殊研究などによって, 必要性や程度が異なりますので, 目的に応じた手技手法を選択されることが大切と考えます。最近では, 血液や脊髄液など無菌の体液からの微生物を遺伝子検査で短時間に検出同定する研究も進み, 日常検査への応用も試みられています。

(大手前病院・山中 喜代治)
【追加回答】
 欧米諸国では, 血液培養が陽性になった時, 血液採取に伴う混入菌, S. epidermidisを速やかに同定する目的で, in situ hybridizationが開発され, 検査に利用されています。DNA, RNAではなく, グリシンのアミノ酸連鎖に塩基を付けたPNAをプローブとして用いているため, ハイブリダイゼーションの厳密な条件が緩和され, 偽陽性, 偽陰性の頻度も少ないとされています。日本では市販されていませんが, 早急に導入したい検査技術だと考えます。
(琉球大学・山根 誠久)

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