|
【質問】
4月から細菌検査に配置になった検査技師です。
赤ちゃんの皮膚の湿疹から白色のブドウ球菌が検出されたのですが, スタフィロ
(凝集法) で陽性になりました。現在, 病院にあるキットでは同定ができません。Staphylococcus
intermediusを疑っているのですが, そう考えてもいいものですか。また,
Staphylococcus
intermediusの病原性や生化学性状など教えていただけませんか。よろしくお願いします。
【回答】
コアグラーゼ陽性のブドウ球菌にはStaphylococcus aureus subsp.
aureusの他にS.
aureus subsp. anaerobius, S. intermediusおよびS. hyicus
などが知られていますが, S. intermediusはヒトの感染症に関与することは稀とされています。主に動物に病原性を示し,
膿皮症に罹患した犬の皮膚などからよく分離されているようです。またS. intermediusはクランピング因子
(結合コアグラーゼ) を持たないという報告があり, 質問のような“スライド凝集法”では陽性になりにくいものと推測されます。また“試験管法”による遊離コアグラーゼ試験でも,
凝固を生じるのに時間がかかるとされています。質問者は分離菌が白色集落を形成し,
同定キットでも同定できなかったためにS. intermediusを疑われたようですが,
S.
aureusでも白色の集落を形成することがありますので, 分離菌がS. aureusである可能性もあると思います。マンニット分解性やDNaseテスト,
その他の性状も両者は類似していますが, マルトース分解性はS. aureusが「陽性」でS.
intermediusは「陰性」とされています。複数の鑑別試験を実施して判断することが大切だと思いますが,
S.
aureusの鑑別には卵黄加マンニット食塩寒天培地や食塩卵寒天培地などでの卵黄反応や発色基質を用いた選択培地での集落の色調なども参考になると思います。
また, 質問者は凝集法 (結合コアグラーゼの検出) のみで判定されているようですが,
コアグラーゼ陰性ブドウ球菌の中にも市販のラテックス凝集試薬で“擬陽性”に判定される菌が存在するため,
試験管法による遊離コアグラーゼ試験も併せて実施されることを勧めます。例えばStaphylococcus
lugdunensisの中の一部の菌株は, 細胞壁に存在する酵素によってラテックス凝集試薬に凝集することがあるといわれています。凝集試薬の種類や前培養する培地の種類などによって擬陽性反応の頻度は異なるとされていますが,
凝集法のみによる判定には注意が必要です。
(公立玉名中央病院・永田 邦昭)
|戻る|
|