08/12/16, 25
■水質試験での黄色ブドウ球菌とサルモネラの定性試験
【質問】
 はじめまして。私は水質分析の会社で細菌検査を担当しているものです。さっそく本題に入らせていただきますが, 現在私の会社では大腸菌, 一般細菌, 真菌, レジオネラに関してのみ細菌検査を行っています。そして, 新たに黄色ブドウ球菌とサルモネラの定性試験も行ってみようという話になりました。しかし, いろいろ調べるにあたり分からない点がいくつかでてきました。

(1) まず黄色ブドウ球菌に関して, 試料調整→卵黄加マンニットで培養→普通寒天培地で純培養→性状試験という流れでやっていきたいと思っていますが, 性状試験は1種類だけ行えばよいのでしょうか。例えば, クランピングファクター試験 (PSラテックスでしょうか) を行って, さらにコアグラーゼ試験 (ウサギ・プラズマなどでしょうか) というように, 複数の何種類か行ったほうがよいのでしょうか。

(2) サルモネラに関してなのですが, EEMブイヨン培地で前増菌培養→ハーナ・テトラチオン酸塩培地で前培養→MLCB, クロモアガー・サルモネラ寒天培地に釣菌→TSI寒天培地, LIM寒天培地に釣菌というようにやっていきたいと思っています。MLCB寒天培地などからTSI寒天培地などに釣菌する際に, 普通寒天培地で純培養したほうがよいのでしょうか。また, 定性試験の場合でも, 血清型別テストは行わないと, 「陽性」か, 「陰性」か判断できないものなのでしょうか。

 大変長々と失礼しました。お忙しいところ恐れ入りますが, ご返答をよろしくお願いします。

【回答】
 上水試験法 (2001年版) の微生物試験共通事項に「規制に用いられない項目」がありますので記載します。「コレラ菌、赤痢菌、チフス菌等による水系感染症は、水域環境の整備や水道施設の充実及び維持管理の徹底によって激減し、今日では皆無に近い状態である・・・・わが国では、水道における病原細菌について、第1に病原細菌の指標として大腸菌群が基準となっていること、・・・病原細菌自体での原水監視は行われてこなかった。この実情は今後も変わることはないものと考えられることから、今回の上水試験法の改訂でも病原細菌は他書にゆずることとし、指標微生物等の観点で表_-3のような項目を選定している」この場合, 他書とは「微生物検査必携(厚生省監修)」や「食品衛生検査指針(厚生省監修)」を示しています。黄色ブドウ球菌やサルモネラが水中に存在しても非常に少ないことが予想できます。そのため, 水試料はメンブレンフィルターでろ過し, 集菌した後に検査する方法がよいと思います。(1) の黄色ブドウ球菌ですが, フィルターを選択増菌培養し, 以下質問者の書かれている方法でよいと思います。同定のための性状試験は, 複数の試験をやると同時に, 必ずグラム染色を行ってください。(2) のサルモネラも, フィルターを前増菌培養した後, 選択増菌培養後に選択分離し, 鑑別テスト (TSI培地, リジン脱炭酸試験など) を行うと同時にO多価血清 (デンカ生研) で凝集反応を確認してください。

(日水製薬・小高 秀正)


【質問者からのお礼】
 大変お忙しい中, 回答していただき誠にありがとうございます。回答の内容をもとに試験を行っていきたいと思っております。重ねてお礼を申し上げます。ありがとうございました。


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