07/06/19
■ 耐性菌への対応について
【質問】
 いつもお世話になります。199床の病院で働く臨床検査技師です。細菌検査は外注です。グラム染色および抗酸菌染色は緊急のみ実施しています。

 発症していない, または起炎菌ではないと考えられるESBLsやベ−タメタロラクタマ−ゼ産生菌が検出された時, 耐性菌に対する抗菌薬投与は必要ありませんか??? ご教授ください。

【回答】
 抗菌薬に耐性を示す菌株 (耐性菌) は, 感染症の治療で実際に用いる抗菌薬が無効であるという意味で問題になるのです。このような菌株が病院のなかで蔓延すると, その病院に入院している患者の感染症 (院内感染) の治療に難儀することにもなり, これも問題となってきます。では, ESBLsを産生する菌株は消毒薬, アルコールにも必然的に耐性なのでしょうか??? 薬剤耐性菌が特に消毒薬にも耐性であるという直接的な因果関係はありません。ESBL産生大腸菌が特定の消毒薬 (例えばアルコール) に耐性であるといった話は聞いたことがありません。抗菌薬に薬剤耐性を示す菌株が問題となるのは, あくまで感染症の治療においてであり, 環境汚染防止対策 (院内感染防止対策) という意味では, その方法においてESBL産生菌と非産生菌で特に区別はない筈です。逆に言えば, ESBL産生大腸菌やVREの院内感染がみつかった病院では, その他の汚染菌も同じように院内で蔓延しているということになります。だから, general precaution (一般的な注意事項) の遵守が重要となるのです。

(琉球大学・山根 誠久)


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