07/10/26
■ 塗沫標本の作成
【質問】
 いつも勉強させてもらっています。199床の一般病院の臨床検査技師です。細菌検査は外注ですが, 緊急時にはグラム染色と抗酸菌染色を院内で実施し, 外注検査でも実施しています。整形外科領域で肉芽組織や縫合糸が滅菌水に入れられて検査科にきます。(このような検査材料で,) グラム染色を実施する場合の標本の作り方についてお教えください。

【回答】
 外科的に採取された組織材料は, 患者に重大な影響と危険を伴って得られた検査材料であるため, 慎重に取り扱う必要があります。第一に, 乾燥させないように検査室に届ける必要があります。

◆染色標本の作製方法

対象材料: 組織
(1) 大きな組織の場合には, 滅菌メスなどで組織を切り取り, 少量の滅菌生理食塩水またはbrothを加え, ホモジナイザー, 組織粉砕機, ストマッカーで均一にします。当院では, 組織の大きさによってストマッカーまたはガラスホモジナイザーを使用しています(写真参照)。
 


(ストマッカー)

(ガラスホモジナイザー)
              
(2) グラム染色では, 細菌と多核白血球, 扁平上皮細胞の出現を観察します。

(3) 通常の培養は, 均一化した組織液を液体増菌培地と寒天培地へ塗布培養します。組織自体が残っている場合には, 液体培地で培養し, 増菌した培地から寒天培地に培養します。

対象材料: 縫合糸
(1) 縫合糸自体が細菌検査の対象となるのは縫合糸の“無菌試験”です。

(2) 縫合不全など, 縫合部位の場合には縫合糸ではなく, 局所の膿または滲出液の培養が細菌学的評価に有用です。

(3) 貴院では滅菌生食水が入った容器で輸送されていますので, そのまま生食水(液量に応じて遠心沈渣) を染色することを勧めます。

(4) 培養は材料の入った生食水を寒天培地に培養します。縫合糸は液体増菌培地に移して培養し, 増菌した培地から寒天培地に再分離します。

(琉球大学・仲宗根 勇)

戻る