08/06/10
■ Triple sugar iron (TSI) 培地について
【質問】
 今, 微生物学で培養などの実習を行っています。そこで質問なのですが, triple sugar iron (TSI) 培地には3つの糖が入っていますが, なぜブドウ糖が高層部, 乳糖・白糖が斜面部と, 分けて反応が見られるのですか??? 組成ではそれぞれの質量の違いかと思ったりもしたのですが・・・お答えお待ちしております。よろしくお願いします。

【回答】
 TSI培地にはブドウ糖0.1%, 乳糖1%, 白糖1%が含まれます。一つの培地で高層部と斜面部で反応する糖が異なるのは何故かとの質問ですが,「それぞれの組成濃度の違い」が正解です。TSI培地には“0.1%”という極低い濃度のブドウ糖しか含まれていない点がポイントです。乳糖および白糖を分解しない菌では, 培養を開始してから早い時期には, ブドウ糖が発酵されて高層部のみならず斜面部でも酸が産生されます (培地全体が黄色)。しかし培養をさらに継続すると, ブドウ糖が消費され尽され, 空気と接する好気条件下の斜面部ではペプトンが分解されてアンモニアが産生されてアルカリに傾きます。乳糖または白糖, あるいは両者を分解できる菌の場合には, 乳糖あるいは白糖が発酵されて生じる酸度が, 菌の好気的発育によって生じるアルカリ度より勝り, 培地全体が黄色変します。
 

 写真は乳糖も白糖も分解しない菌です。写真左の培養の初期 (8時間) では培地全体に含まれるブドウ糖が発酵され, 高層部と斜面部共に酸性の黄色になりますが, 培養時間の経過と共に斜面部はペプトンを分解してアルカリになり赤色に呈色します (写真右, 18時間培養)。

 培地のpH変化や遊走運動, 溶血の観察など, 培養時間の経過を時間単位で観察すると細菌学はもっと楽しくなります。

(琉球大学・仲宗根 勇)

戻る