|
【質問】
細菌薬剤感受性試験についてご教示ください。
細菌培養の薬剤感受性試験の基準はどのように決められたのでしょうか???
微量液体希釈 (microdilution) 法により, 機械的に検査されて感受性の結果がS,
I, Rと報告され, 抗菌薬選択の参考にしていますが, S (感性)の基準濃度が各薬剤によってかなり異なります。この基準となる濃度はどのように決められたのかを検査部や検査会社に聞いても,
機械のメーカーが決めたもので詳しくは分からないという返事でした。例えば,
気道からインフルエンザ菌が検出された場合に, ABPCであれば≦1μg/ml, CAMであれば≦8μg/mlがS
(感性)の基準となっております。従って, CAMでS (感性)であっても8μg/mlではじめて感性である菌も含まれる訳で,
この場合, CAMが臨床的に本当に効果があるとは考えにくいと思われます。それぞれの薬剤に対して感性かどうかの薬剤濃度の基準というのはどのように決められたのでしょうか???
【回答】
薬剤感受性の判定基準は「ブレイクポイント」により設定されています。「ブレイクポイント」とは感性と耐性の分岐点と解釈され,
微生物学的なブレイクポイントと臨床的なブレイクポイントがあります。微生物学的ブレイクポイントは,
ある抗菌薬のMIC値を多数の株について測定した場合, そのMIC値分布が感性側と耐性側に分かれた分岐点を示します。また,
臨床的なブレイクポイントは, 臨床的に治療効果が期待できるMIC値と効果が期待できないMIC値との分岐点を示します。いずれのブレイクポイントも,
抗菌薬と細菌の組み合わせによっては一致する場合もありますが, 異なる場合もあります。微生物検査で用いられているのは,
CLSI(Clinical Laboratory Standard Institute)において, 微生物学的なブレイクポイントで設定されたものが広く用いられています。また日本化学療法学会では,
呼吸器感染症, 敗血症, 尿路感染症に適用できる臨床的ブレイクポイントが設定されています。質問にありますように,
慢性気道感染症からインフルエンザ菌が分離された場合, ABPCのブレイクポイントはCLSIも日本化学療法学会も≦1μg/mLですが,
CAMでは異なり, CLSIでは≦8μg/mLであるのに対して, 日本化学療法学会では≦2μg/mLとなります。検査室からの報告は,
CLSIの設定したブレイクポイントになると思いますので, 治療効果に疑問のある場合は,
疾患が限定されますが, 日本化学療法学会の基準も参考にされることを勧めます。
|戻る|
|