先天性胆道拡張症における腹腔鏡下肝管空腸吻合の工夫
✓ 2016年より先天性胆道拡張症に対し腹腔鏡下の手術 を行っています
✓ 鏡視下の胆管空腸吻合では術後狭窄といった合併症 を少なくするために肝移植手術手技を取り入れて全周 に結紮点を管腔外とした外翻吻合を行っています
肝移植における胆管空腸吻合

− 胆管と空腸の吻合ラインを直角になるように配置する
− 移植肝胆管後壁にあらかじめ吻合糸をかけておく
− 腸管後壁左縁から順に腸管後壁に糸針をかけ、結紮、糸を切る
− 操作を繰り返し右縁にする
⇒ 吻合ラインが直角なので胆管、腸管とも運針が確実で容易にできる
− 前壁を外糸で結節縫合する
鏡視下での応用

ポート配置
①カメラポート(5mm)②3mm(臍部にフリーアクセス®を装着)
③~⑤working port 5mm ⑥ミニループリトラクター®胆嚢挙上

乳児症例

本手技の利点
✓ 良好な視野で縫合できる
✓ 全周性に結紮点が管腔外になる
✓ 外翻した広い吻合孔を作成できる
開腹手術と同等の胆管空腸吻合が可能である
後腹膜鏡下腎盂形成術
・鏡視下腎盂形成術において、後腹膜アプローチは腹腔内操作がないため腹部内臓器関連合併症を回避できる
・従来の後腹膜開放の術式と同じ視野で同じクオリティーを保つこと ができ、開放手術へ変更を必要としたとき体位変換を行うことなくへ変更が可能
・体格の小さい乳児症例や癒着の危惧される再手術症例においても、工夫を加えることにより後腹膜鏡下で確実に安全に施行できる
・馬蹄腎合併症例の腎盂形成術でも従来の開放手術と同様に後腹膜アプローチで視野確保、吻合操作が可能である


乳児症例




馬蹄腎症例 :幼児、右側腎



後腹膜鏡下手術の実際
オリエンテーション
開放手術での経験と同じであり、創直下に直接腎へと到達できオリエンテーションが困難となることは少ない
術野スペース
手技的にUPJ周囲の剥離操作と同部位での吻合操作の みであり、運針の可能なスペースの確保のため開放手術 より少ない剥離範囲で手術可能となる利点がある
アルノート®ラップシングルを使用することで体格の小さ い症例でも鉗子操作スペースの確保ができる
Hirschsprung病に対する腹腔鏡下Soave法におけるprolapsing techniqueの有用性
・粘膜抜去の操作を肛門外の広い術野で直視下に行える
・粘膜抜去を、層の同定が容易な口側から開始できる
術後排便機能のために重要な肛門管機能
温存を確実・容易にできる術式である
確実に肛門管を温存するために・・・

操作中、肛門管を過伸展しない
吻合部はAno-rectal line(Herrmann線)としそれより肛門側は温存する
直腸肛門管移行部(吻合部)では粘膜下に連合縦走筋が線維性筋組織(Treiz靭帯)を形成し、層の同定が難しい
⇒ 粘膜抜去は層の同定が容易な直腸側から行うのが合理的
腸管のprolapsing:腹腔鏡操作を併用することで肛門管を伸展することなく脱転できる
粘膜抜去:終点となるAno-rectal lineを確認し、口側から行う

PRETEXT/POSTTEXT III 肝芽腫に対する手術の工夫
腫瘍の完全切除のために・・・
・肝三区域切除:残肝が小さいことがある
・肝全摘出 :肝移植が必要
根治性を高めるため大肝臓切除が必要
根治性を維持しつつ残肝容積を多くするために














巨大肝血管腫に対する治療戦略(Congenital hepatic hemangioma)
乳児巨大肝血管腫は治療方針において 無症状で経過観察を行うものから、 症状によっては内科的治療の介入や肝移植を含めた外科的治療まで求められる






IDRF陽性神経芽腫における“Operable“の判断
臓器との関係:臓器機能障害を避けることができるか?
腎臓 直接浸潤のため部分切除ないしは摘出が必要となる
→ 適応なし(腎臓は温存できることが必要)
肝臓 直接浸潤ないしは転移のため部分切除(系統的切除を含む) が必要となる
→ 適応あり(肝再生が期待できるため)
尿管・膀胱 直接浸潤のため部分切除が必要となる
→ 適応なし(切除吻合は原則避けるべき)
脈管との関係:剥離・温存することができるか?
動脈 基本的に温存できる(剥離可能)であることが必要
(腫瘍の栄養血管は切離)切除・吻合は避けるべき
静脈 基本的に温存できる(剥離可能)であることが必要
(ドレナージ血管は切離)部分切除・吻合/再建は可?
外科的評価:臓器
・右腎 頭側への圧排はみられるが直接浸潤はない
→ 剥離・温存は可能
・肝臓 直接浸潤・転移はなく、頭側への圧排のみ
・尿管 著しく右方へ偏位がみられるが、浸潤はない
→ 剥離・温存可能

外科的評価:血管系
・下大静脈 腫瘍により腹側へ偏位は著しいが腫瘍栓や直接浸潤像がない
→ 剥離は可能(の可能性が高い)
・大動脈 管腔・形態が維持されており明らかな直接浸潤像がない
→ 剥離は可能(の可能性が高い)
・腎動脈 管腔・形態が維持されており明らかな直接浸潤像がないが剥離・温存する上で最も問題となる
→ 手術可能かどうかの術中判断(最初にアプローチ)
・左総腸骨静脈 CTで腫瘍栓はなく血管造影にて開存は確認されている
→ 温存できる可能性有り

手術の準備
・手術に先立ち膀胱鏡を用いて
両側尿管ステント留置
偏位の強い尿管の位置を確認
・乳幼児生体肝移植経験麻酔医や
手術室肝移植経験ナースと
共同で術前シミュレーションを施行
・小児心臓外科チームとの日程調整
大動脈操作で不測の事態に備えて
腫瘍摘出術
・手術時間 13時間5分
・出 血 100ml
・腫 瘍 6cm×8cm×9cm 156g
血管はすべて温存した状態で腫瘍を 摘出することができた
経過
周術期血圧変動や合併症なし
術後8日:小児科転科