生まれつきの心臓病(先天性心疾患)について:ファロー四徴症
先天性心疾患は、生まれつき心臓に異常がある状態を指し、100人に1人の割合で生まれてきます。
「ファロー四徴症」は、複雑な先天性心疾患の一つで、4つの心臓の異常が組み合わさっているのが特徴です。
ファロー四徴症は、心臓の機能に深刻な影響を与えることがあり、早期の診断と適切な治療が重要です。
ファロー四徴症とはどのような病気?
ファロー四徴症は、次の4つの心臓の異常が組み合わさっている疾患です(下図A)。
1. 肺動脈狭窄:肺動脈に血液を送る道が狭くなっているため、肺に十分な血液が届きにくくなります。
2. 心室中隔欠損症:右心室と左心室の間の壁(心室中隔)に穴が開いています。
3. 大動脈騎乗:大動脈が右心室と左心室の両方にまたがる位置にあります。
4. 右心室肥大:右心室が血液を肺へ送るために過剰に働く結果、筋肉が肥大します。
これらの異常が組み合わさることで、全身に十分な酸素を供給できない状態が引き起こされます。

ファロー四徴症の影響と症状
ファロー四徴症では、全身に送られる血液の酸素が少なくなるため、チアノーゼ(皮膚や唇が青紫色になる)が現れます。
また、運動時に息切れや疲れやすさが目立つことも特徴です。
症状の程度は、肺動脈狭窄の程度によって異なり、重症の場合は乳児期から手術が必要です。
治療が必要な場合とそのタイミング
ファロー四徴症の治療は、通常外科手術によって行われます。
手術のタイミングは、症状の重さや病気の進行状況に応じて決定されます。
新生児期に重症のチアノーゼが見られる場合は、緊急手術が必要になることがあります。
多くの場合、初期治療として「シャント手術」が行われ、肺へ血液を送る経路を確保します。
その後、心室中隔欠損の修復や肺動脈狭窄の解除を行う「根治手術」が行われます。
この手術は、通常、生後数ヶ月から1年以内に実施されることが多いです。
ファロー四徴症の手術について
ファロー四徴症の手術は、心臓の機能を回復させ、酸素不足の状態を改善するために行われます。
根治手術では、心室中隔欠損を修復し、肺動脈狭窄を解除します。
これにより、心臓が効率的に血液を肺へ送り、酸素を含んだ血液を全身に供給できるようになります。
手術は胸部を切開して行われ、人工心肺装置を使用して心臓の機能を一時的に代替しながら進められます。
肺動脈弁って何?
肺動脈弁は、心臓の右心室から肺に向かって血液を送り出すときに重要な役割を果たす「逆流防止の弁」です。
血液が肺に流れた後、右心室に戻らないようにしっかりと閉じてくれます。
でも、もしこの肺動脈弁が壊れてしまうと、血液が右心室に逆流してしまい、心臓に大きな負担がかかります。
これが長く続くと、心臓の働きが弱くなってしまうことがあります。
ファロー四徴症の手術には2つの方法があります
ファロー四徴症では、右心室の出口から肺動脈弁、そして肺動脈にかけて狭くなっている部分があります。
これを広げる手術が必要です。手術には2つの方法があります。
1. 肺動脈弁を切らずに広げる方法(弁輪温存手術)
肺動脈弁が十分な大きさであれば、弁を切らずに手術ができることがあります。
こうすると、将来の血液の逆流が起こりにくくなるため、患者さんの心臓への負担も減ります。
2. 肺動脈弁を切って広げる方法
もし肺動脈弁が非常に小さい場合は、どうしても弁を切って広げる手術が必要です。
ただし、弁を切ると後で血液の逆流が起こる可能性があります。
どの方法を選ぶかは、肺動脈弁のサイズや病院の技術によって決まります。
肺動脈弁を切らない(壊さない)弁輪温存手術

弁輪温存手術では、肺動脈弁をできるだけ切らずに広げることを目指します。
手術で切る部分は、右心房と肺動脈の2か所だけです。
まず、右心房から、三尖弁越しに心室中隔欠損を閉じます(A)。
次に、右心室の出口の狭くなっている部分を、肺動脈弁を傷つけないように慎重に広げていきます(B)。
この方法により、肺動脈弁自体を切ることなく手術を行うことができ、弁を傷つけずにすむため、手術後の逆流リスクを減らせます(C)。
↓当科における弁輪温存手術の動画です
肺動脈弁を切る(壊す)経弁輪手術(下B図)

もう一つの方法である経弁輪手術では、肺動脈から右心室までを広げるために、肺動脈弁を切る手術が行われます
この場合、狭くなった部分をしっかりと広げられますが、肺動脈弁が壊れてしまうため、「逆流」が強く残ります。
経弁輪手術で肺動脈弁が逆流するとどうなる?

経弁輪手術の後、肺動脈弁が逆流すると、心臓にいくつかの問題が生じます。
まず、血液が右心室に逆流することで、右心室が徐々に大きくなり、筋肉が引き伸ばされて薄く、弱くなってしまいます。
その結果、心臓が血液を全身に送り出す力(収縮力)が低下してしまいます。
さらに、右心室の入り口にある三尖弁も広がり、弁同士がうまく閉じなくなるため、三尖弁からも血液が逆流します。
この三尖弁の逆流が起こると、右心房が大きくなり、不整脈などの心臓リズムの乱れが発生する原因になります。

↑それでも成人期に達するころまでは症状がないことが多いです。
しかし30際から50際くらいになるとほとんどの方に「疲れやすい」、不整脈など、生活の不具合が生じます。
トップページ
ファロー四徴症の治療では、手術の質だけでなく、手術時間の短縮と回復のスムーズさが非常に重要です。
手術が長引くと心臓や他の臓器に負担がかかり、リスクが高まります。
そのため、迅速かつ正確に行われる手術が理想です。
また、人工心肺装置の使用時間を短くすることで、術後の合併症のリスクを減らし、回復を早めることができます。