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【質問】
食品会社で微生物検査を担当することになった●●と申します。最近このサイトを知り,
参考にさせていただいております。今手元に, 食品衛生小六法 (平成21年度版)【以下Aと記載】と食品衛生検査指針
(微生物編)【以下Bと記載】, 食品微生物検査マニュアル
(第2版)【以下Cと記載】があり, これをもとに質問させていただきます。
(1) 大腸菌群の公定法について
前任者から大腸菌群を公定法で検査する時には, 食肉製品の場合, 10倍乳剤をBGLB発酵管に接種し,
ガス発生が確認されたものは推定試験「陽性」, 発生しない場合は「陰性」とし,
推定試験「陽性」の場合は, さらにEMB培地に画線塗抹し, 金属光沢もしくは暗紫赤色のコロニーが確認された時は,
乳糖ブイヨンでガス発生するかどうかを確認し, グラム陰性無芽胞桿菌を大腸菌群「陽性」とすると聞いております。BGLBの判定については、質問箱[http://www.jarmam.gr.jp/situmon3/bglb-baichi.html]にも記載されており,
また文献BとCにもこのような記載があります。しかしながら,
文献Aを見ますと, 食肉製品の項には「加熱食肉製品」のところに「大腸菌群陰性でなければならない」と記載があるだけで、検査法についての記載がありません。またAのp.1178にC.食品一般の保存基準の項に「大腸菌群試験法」の記載がありますが,
EMBにおいて定型的な集落発生があれば確定試験陽性 (大腸菌群陽性)とし, 非定形的の集落の発生した場合は完全試験を行うとあり,
コロニーの金属光沢や色での判定ではありません (そもそも定形的集落,
非定形的集落ってどんなコロニーのことですか???)。BGLBについても「ガス発生があれば確定試験陽性
(大腸菌群陽性) とする。ただし, 培地の色調が褐色になったときは完全試験を行う」とあり,
培地の色が褐色のときに次のステップにいくようです。食品衛生検査指針には多くの検査法が記載されているので,
すべて公定法ではないのは承知しておりますが, 陽性,
陰性の判断がなぜここまで大きく異なるのでしょうか??? それともここ最近,
公定法が改定されたのでしょうか??? 改訂されたのであれば, 他にも改定された検査法はありますでしょうか
(食品の微生物検査の範囲で)。教えてください。また, 食肉製品の大腸菌群の検査
(公定法) は食品衛生小六法には記載されておりませんが, 本当にあるのでしょうか???
(告示試験法ではなく, 通知試験法???)
(2) 大腸菌群・大腸菌検査用の酵素基質培地について
食品衛生の分野では, 大腸菌とE. coliは異なり, E. coliは“糞便系大腸菌群”のことを指すと伺いました。弊社では通常の大腸菌群,
E.
coliの検査に日水製薬のXM-G寒天培地を使用しているのですが, 培地には大腸菌群・大腸菌検査用とあるのですが,
ここでいう大腸菌とはE. coli (糞便系大腸菌群) のことでしょうか???
よろしくお願いします。
【回答】
(1) 大腸菌群の検査法については, 以下の通知に記載されています。平成21年版 食品衛生小六法
(新日本法規)_ (通知・実例) の2481頁に「食品衛生法施行規則及び食品、添加物等の規格基準の一部改正について」(平成5年3月17日 衛乳第54号)
の第5試験法の中に「別紙1に示す方法」とあります。(別紙1) 食肉製品日、鯨肉製品及び魚肉ねり製品の試験法 第3試験法 1微生物 (6)大腸菌群試験法
(2487頁) に記載されています。EMB培地でのコロニーの観察ですが, 実技講習会
(回答者の所属する日水製薬も行っています) などを受講され, 質問者自身で,
本物を見ることを勧めます。
(2) 日水製薬のXM-G寒天培地のラベルには大腸菌群・大腸菌検査用と記載されています。ここでいう大腸菌とはE.
coliのことを指しています。E. coliはEsherichia coliを省略したもので学名です。XM-G寒天培地は酵素基質培地で,
大腸菌群はβ-ガラクトシサーゼを検出する基質, 大腸菌はβ-グルクロニダーゼを検出する基質を含んでいるため,
グラム陰性桿菌でβ-ガラクトシダーゼを保有しているAeromonas は赤いコロニーを形成する可能性があり,
Shigellaのようにβ-グルクロニダーゼを保有している細菌は青いコロニーを形成する可能性があります。しかし,
増殖した時のコロニーの大きさなどで区別できると考えます。
(日水製薬・小高 秀正)
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