SMSの制御による膵癌新規治療法の開発
膵特異的変異型K-ras活性化により、ヒトの膵前癌病変PanINによく似た病変が出現する。 そして膵特異的変異型K-ras活性化+TGF-beta receptor 2遺伝子ノックアウト(Kras+Tgfbr2KO)により、間質の著明な線維化を伴う分化型管状腺癌(pancreatic ductal adenocarcinoma: PDAC)が出現し、ヒト膵癌像をよく再現する(Ijichi H, et al: Genes Dev 20: 3147, 2006)。そこで膵特異的分化因子Ptf1a遺伝子改変Ptf1aCreマウスとK-ras遺伝子活性化LSL-KrasG12Dマウスを交配させる。そしてこれとSMSノックアウト(KO)マウス(SMSKOマウス)を交配させた系統とSMSが正常なマウスと交配させた系統の各々と、TGF-receptor 2遺伝子KOマウス(Tgfbr2KO)を交配させ、膵発癌過程の変化を観察する。もしSMSKOマウスにおいて膵発癌が抑制されれば、両系統におけるとくにスフィンゴ脂質の質量分析により、膵発癌の鍵を握る標的脂質を同定する。正常組織と癌組織との差異を解析し、その標的脂質の機能を阻害する薬剤の開発をめざす。