生まれつきの心臓病(先天性心疾患)について:心房中隔欠損症

生まれつきの心臓病(先天性心疾患)は、100人に1人の割合で生まれることが知られています。
その中でも比較的よく見られるのが「心房中隔欠損症」という病気です。
この病気では、心臓の右心房と左心房を仕切る壁(中隔)に穴が開いています。
そして、それが原因で心臓の中の血液の流れが通常とは異なってしまいます。
ここでは、この病気について詳しく説明します。

心房中隔欠損症とは?

心臓には右心房と左心房という2つの上室がありますが、通常はこの間の壁(中隔)がしっかりと閉じています。

心房中隔欠損症では、壁に穴が開いているため、酸素を多く含む血液が左心房から右心房へ流れ込んでしまいます(A)。

この結果、大動脈から体へ出ていく血液の量がへってしまいます (B)。

また、血液が左心房から右心房に流れ込むため、肺へ送られる血液の量が増え、肺にかかる圧力が上がります (C)。

これを「肺高血圧」といい、さらに右心房や右心室にも負担がかかります。

多くの場合、心房中隔欠損症は無症状ですが、穴が大きい場合や長期間放置されると、疲れやすさ、息切れ、呼吸器感染症が頻繁に起こるといった症状が現れることがあります。

↓心房中隔欠損の血液の流れを動画でみる

治療が必要な場合

治療が必要かどうかは、穴の大きさや患者さんの状態によります。

小さな穴の場合は、自然に閉じることもあり、治療を必要としないことが多いです。

しかし、穴が大きい場合や肺高血圧が進行している場合は、適切な時期に治療が必要です。

治療法には、カテーテルを使って穴を閉じる方法や、外科的な手術があります。

カテーテル閉鎖術

カテーテル治療では、太ももの血管を通して心臓まで特別な装置を運び、穴を閉じます。

この方法は体への負担が少なく、回復も早いため、特に多くの患者さんに選ばれています。

外科手術が必要な場合

心房中隔欠損症を外科手術で閉じる場合は

(A)穴を直接閉じる方法と、

(B)パッチで閉じる方法があります。

どちらを選択するかは、実際に穴の大きさなどをみて決めます。

すべての心房中隔欠損がカテーテルで治療できるわけではありません。

患者さんの体格が小さい場合や、穴の大きさや位置によっては、カテーテル治療が難しいことがあります。

その場合、外科手術が必要になります。

手術方法には「胸骨正中切開」という胸の中央を切開する方法や、
「右腋窩切開」と呼ばれる脇の下を切る方法があります。

後者の方が傷跡が目立ちにくいという特徴があります。

↓右腋窩切開による心房中隔欠損症手術の動画はこちら

傷跡を小さくする選択肢

手術では、患者さんの体格に応じて傷跡を最小限にする方法を検討します。

例えば、右脇の下からアプローチする「右腋窩切開」や、内視鏡を使った手術が可能な場合は、さらに小さな傷跡で治療を行うことができます。

特に、小学生くらいの年齢になると、内視鏡手術が可能になることが多いです。

↓心房中隔欠損に対する内視鏡手術の動画はこちら

当科の治療の特色

当科では、心房中隔欠損症の治療において、患者さんにとって体への負担が少なく、回復も早い方法を目指しています。

右腋窩切開や内視鏡補助手術に豊富な経験を持ち、できるだけ短時間で正確な手術を行うことを心がけています。

また、出血の少ない安全な手術を提供し、患者さんとご家族に安心して治療を受けていただけるよう努めています。

ご不明な点やご質問があれば、どうぞお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ先
金沢医科大学小児心臓血管外科
メール:pedsurg@kanazawa-med.ac.jp 電話:080-2964-1839