学報94号の掲載中から抜粋

ハイテクリサーチセンター スタート

センター長に小田島粛夫学長就任

 総合医学研究所を基盤に進められてきた本学ハイテクリサーチセンターが平成10年4月1日付けで発足し、同日付けで小田島粛夫学長がセンター長(併任)に発令された。

センター長就任の挨拶

 平成8年度、文部省は私立大学の学部、大学院研究科、研究所における先端的な学術研究基盤を強化し、科学研究や技術開発の推進を図る目的で、幾つかの私立大学を選んで、ハイテクリサーチセンターを設置することを決定した。このハイテクリサーチセンター構想では大学の研究開発プロジェクトの実施に必要な施設、研究装置、研究設備、研究費・研究スタッフに対して総合的な支援を行うことになっており、総予算額の大凡半額が補助されることになっている。
 本学は平成9年7月にハイテクリサーチセンター整備事業の拠点の1つに選定され、研究施設整備を進めてきたが、この3月には研究装置の設置を含むすべての整備事業が完成し、施設や研究用機器の使用も可能になった。
 これまで本学では開学以来、研究用大型機器の共同利用を目的として、総合医学研究所内に基礎医科学研究部門と共同利用部門を設置し、機器の集中管理を行ってきたが、ハイテクリサーチセンターの設置を機会に、今後このハイテクリサーチセンターを中心に研究施設や研究用機器の管理、運営はもちろん、学術研究の一層の推進を図りたい。このセンターは医学部、大学院研究科、総合医学研究所から完全に独立した、本学の学術研究の拠点であり、その名に恥じない研究施設や研究機器の充実が必要であると考えている。また、本学は私立医科大学であるということもあって、教育、診療を最優先に考えざるを得ない事情があり、これまでは総合医学研究所を中心に、研究用機器の管理・運営だけでなく、教員や大学院の学生に対して研究の支援を行ってきたが、これからはハイテクリサーチセンターを中心に研究支援体制を強化、充実していく予定であり、皆さんのセンターのご利用はもちろんご協力を心から期待している。
 なお、センターは運営委員会、機器施設整備委員会、研究推進委員会の3つの委員会を中心に運営されるが、ハード面は機器施設整備委員会で、また、ソフト面は研究推進委員会がそれぞれ担当することになっております。ハイテクリサーチセンターの管理運営や研究支援体制に関するご意見はインターネットなどを利用してお寄せいただければ幸いである。



左上  電子分光型電子顕微鏡システム
左下  病原体遺伝子操作高度安全実験システム

右上  多倍体化実験室
右下  フローサイトメーターシステム

本学におけるハイテクリサーチセンター構想

 文部省の平成9年度私立大学ハイテクリサーチセンター補助整備事業によって整備が進められてきた本学のハイテクリサーチセンター施設は平成10年3月13日予定通りに完成した。
 ハイテクリサーチセンターの整備に当たっては、従来の機器に加えて約3億6千万円という多額の予算が投じられ、新たな研究装置や設備が整備された。充実した研究環境の下での金沢医科大学における医学研究の飛躍的な活性化が望まれる。
 本学のハイテクリサーチセンターは金沢医科大学を中心とした、北陸地方における医学研究の一つの中核となるべく、学内の研究者のみならず学外の研究者にも利用できる体制が採られている。現在計画されている3つのプロジェクト研究には新進気鋭の研究者を年次契約で外部から採用できることになっており、本学の研究レベルを飛躍的に向上せしめ得る優秀な学外研究者で、金沢の地に数年滞在可能な博士号所有者が求められている。
 将来的にはハイテクリサーチセンターは学内研究の技術的サポートを担う人材派遣センター的な役割を持つと考える。学外から積極的に新技術を吸収し、遺伝子操作技術、細胞培養技術、免疫技術そして高度な機器測定等に堪能な人材を育成し、ハイテクリサーチセンター内のみならず各教室への短期の派遣をも可能ならしめんと考える。
ハイテクリサーチセンター利用方法
 ハイテクリサーチセンターに設置された機器の利用方法は原則として従来の共同利用大型機器の利用方法と同じである。学内の研究者は各自の研究の遂行のため、設置された大型機器を自由に使用でき、学外研究者は学内研究者の責任の下に大型機器を使用することができる。近い将来、大型機器の測定にはオペレーターを常駐させ、測定時間の効率化を図るつもりではあるが、当面は各大型機器での測定は研究者自身が操作することになっている。具体的な利用方法及び使用方法は当該装置の管理責任者に、また実験室等の利用方法は各プロジェクト代表者にお訊ね下さい。
ハイテクリサーチセンターホームページ
 近日中にハイテクリサーチセンターホームページ(HRCホームページ)を開設する。そこでは・ハイテクリサーチセンターの運営に関する意見及び要望あるいは新たに設置して欲しい機器などを聞く窓口・ハイテクリサーチセンターに設置された機器の説明・装置の具体的な使用手順・利用者名も含めた利用状況・具体的な測定例等・不要な新品試薬や有効期限内の不要抗体等の保管状況・各教室が保存している提供可能な細胞等の情報を掲載する予定である。
装置の名称、設置場所、管理責任者
 ハイテクリサーチセンターは金沢医科大学基礎研究棟高層棟1階にある。センター内に設置されている主な研究装置の名称、概要、設置場所及び管理責任者は下記のようになっている。(藤川孝三郎記)
電子分光型分析電子顕微鏡システム
本体/カールツァイス社製 LEO912AB
クライオトランスファーホルダー/カールツァイス社製 CT3500
クライオミクロトーム/ライカ ウルトラカットUCT
〈装置の概要〉
 クライオミクロトームで超薄切片化された試料をクライオトランスファーホルダーにて凍結したまま顕微鏡に装填し、試料を透過した電子を電子分光し結像することにより、試料内の特定元素の分布状態が細胞レベルで確認できる。また、樹脂包埋試料でも極めて薄く切片化されていれば同様の分析像が得られる。
   得られた画像は、高精細プリンター(ピクトログラフィー)で打ち出される。
設置場所:基礎棟1階、細胞構成測定室
管理責任者:栗原孝行(内線7217)

フローサイトメーターシステム
 自動細胞解析分離装置ファックスキャリバー/ベクトン・ディッキンソン社
 落射蛍光顕微鏡/オリンパス BX50−34−FLAD1
 全自動顕微鏡写真撮影装置/オリンパス PM30ー3
 ポラロイド・デジタルパレット/日本ポラロイド HR−6000
〈装置の概要〉
 浮遊状態にした細胞のDNA分布及び蛍光染色できる細胞諸量が測定でき、使用方法は簡便。
設置場所:基礎棟1階、細胞形態動態測定室
管理責任者:村上学(内線7217)

細胞増殖観測システム
 細胞計数分析装置/コールター社製 Z−2型
 倒立型システム顕微鏡  蛍光位相差セット/オリンパスIX70−22FL PH
〈装置の概要〉
 細胞や花粉などの数を測定する装置で、細胞の増加及び培養状態を観測するのに用いられる。
設置場所:基礎棟1階、細胞形態動態測定室
管理責任者:村上学(内線7217)

病原体遺伝子操作高度安全実験システム(P3)
 P3実験設備北斗科学産業 /BHR−20−P3
 安全キャビネット/日立 PCV−1305BRG3
 ジーン・ガン/Bio Rad
〈装置の概要〉
 本施設は遺伝子ベクターとして動物ウイルスを活用するのに必須であり、ウイルスを安全に取り扱うためのキャビネットを設置し、ウイルス培養および細胞分離のためにCO2インキュベーターおよび冷却遠心機を装備している。
 ジーン・ガンは効率よくかつ安全に遺伝子を細胞に導入するためにP3施設内に置き、ウイルス保存用フリーザーはP3施設前のフリーザースペースに設置した。
設置場所:基礎棟1階、P3実験室
管理責任者:竹上勉(内線7221)

遺伝子機能解析システム
 ジェネチックアナライザー(キャピラリー式DNAシークエンサー)/ABI
 シークエンスデテクター(定量性のあるPCR装置)/ABI
 高速カラムクロマトグラフィーAKTA(生体分子精製装置)/ファルマシア
 ビーコン2000(蛍光偏光度測定・生体分子相互作用検出装置)/Takara
 マイクロプレートリーダー/Bio Rad
〈装置の概要〉
 遺伝子の構造および機能解析、さらに蛋白質の精製および機能解析に有用である。
 特にジェネチックアナライザーは遺伝子異常、変異を簡便に検出することが可能な装置である。
設置場所:基礎棟1階、遺伝子実験室
管理責任者:竹上勉(内線7221)

ガスクロマトグラフイー/質量分析システム
 質量選択検出器(100オートサンプラー付き)/ヒューレットパッカード社
 サンプル自動前処理装置/ ヒューレットパッカード社
〈装置の概要〉
 先天性代謝異常症の化学診断を行うためには、生体内に異常に蓄積した微量成分を的確に同定定量することが必要である。これにはガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)法が最も適している。
 多数検体自動分析のためにはオートサンプラーを使用し、最終的には全自動化学診断システムの構築を目指すことによって、早期診断、早期治療のみならず、発症メカニズムの研究を促進する。
設置場所:基礎棟1階、機器測定室
管理責任者:久原とみ子(内線3600)
 
なお、ハイテクリサーチセンター整備に伴い、以下のとおり一部講座等の移転があった。

 法医学教室  基礎研究棟1階→基礎研究棟 2階
 血清学教室  基礎研究棟1階→臨床研究棟10階
 総合診療科  病院別館1階 →臨床研究棟10階
 総医研基礎医科学研究部門(一部)
        臨床研究棟10階→基礎研究棟1階
 総医研熱帯医学研究部門
        臨床研究棟10階→基礎研究棟1階

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