04/06/22
04/06/23
■ オートクレーブとプリオン
【質問】
 私は歯科医師国家試験浪人中です。今年の第97回歯科医師国家試験において, 以下のような問題が出題されました。

[問題]オートクレーブが有効でないのはどれか。

a. プリオン
b. ウイルス
c. 芽胞
d. 真菌
e. 原虫
 予備校の解説によると答えは aです。そこで私はプリオンについて, もっと知りたいと思い, ネット上を検索していたところ, こちらのページを見付けまして質問しようと思い立ちました。質問箱の中に「B型肝炎ウィルス(HBV) はオートクレーブで死滅する???[http://www.jarmam.gr.jp/situmon/hbv.html]」という質問がありますが, この質問に対する答えの欄にプリオンについて言及している部分があります。それによると「オートクレーブの滅菌時間と温度について・・・プリオンという病原体では132℃ (2気圧) で1時間, または135℃, 20分間以上のオートクレーブが必要になります。」となっています。ということは, プリオンにもオートクレーブが有効であるということになり, 予備校の解説は誤り・・・というか, 問題の答えすらなくなってしまうことになります。この場合どのように考えたら良いのでしょうか。お忙しいところ恐縮ですが, お答えいただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。

【回答】
 まず第一に, “問題の文章が充分, 正確でない”という点が指摘できます。“オートクレーブ”という言葉が極, 慣用的に使用されています。出題者は通常よく使われる2気圧 (121℃) 15〜20分間の高圧滅菌を意味して問題を作成したものと思われます。この条件だと, プリオンの感染性は失われません (有効でない)。しかし, オートクレーブをもっと広い意味でとらえると, 温度 (圧力) と滅菌時間を変化させることで滅菌される微生物の種類が変わってきます。プリオンが, 通常用いられるオートクレーブとは違う条件 (132℃, 1〜2時間) で著しく感染性が失われることは, 有名な教科書, 戸田新細菌学 (改訂32版), 856〜859頁に記載されています。ただ, プリオンの感染性に関しては未だ不明な部分も多いことを理解してください。

(琉球大学・山根 誠久)

【質問者からのお礼】
 お忙しいところ, 回答いただきまして, ありがとうございました。今後も勉強に励んでいきたいと思います。


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