03/04/18 
■ フザリウムの培養方法について
【質問】
 初めて質問させて頂きます。私は今度卒論で微生物を扱った研究をすることになった大学四年生のものです。基本的なことなのですが, フザリウムのいい培養法と保存法を教えて頂きたいのです。
 私は今度Fusarium. oxysporumの殺菌について卒論を書くことになり, 殺菌剤の量, 頻度を変えながら効果を見ていくという研究を一年間していく予定です。それにあたって, いま培養法と保存法について勉強しているのですが, 本を読んでるだけではポイントがつかめません。この前も培地としてPSA培地がいいと本に書いてあったのにCzapek培地の方が変異を起こしにくくて保存によいと言われたりしました。また, うちの研究室で微生物を扱うのは初めてなので指導教官もいまいちよくわかってないようです。というわけでFusariumの培養, 保存について, またそれに限らず微生物を扱ううえで注意すべき点などを教えていただけたら幸いです。

【回答】
回答の前に, 質問者へ苦言を述べます。JARMAM質問箱に最近この種の質問が数多く寄せられ, 回答者からも不満と疑問が寄せられています。大学という最高学府, 学問, 研究を進める恵まれた環境にありながら, 安易に質問して当面の問題の解決を図る姿勢が目立つからです。“うちの研究室で微生物を扱うのは初めてなので指導教官もいまいちよくわかってないようです”と書かれていますが, 研究を始める前の検討がきちんとされていないことに驚きます。指導教官とは名ばかりなのでしょうか。指導教官には指導する義務がある筈ですから, まず指導教官とよく話されることです。研究を進める環境が整わないのであれば, 研究を義務として行う必要はまったくありません。JARMAM質問箱にあるQ & A「研究の目標もわからぬまま実験を行っています」をよく噛み締めて読んでください[http://www.jarmam.gr.jp/situmon/kenkyu_mokuteki.html]

(琉球大学・山根 誠久)

 実際の実験計画が不明なので,一般的なことを回答します。
使用培地については,本菌は培養がそれほど難しい菌種ではありませんので,極端にいうと発育してくる培地であれば何でも良く,厳密な選択は必要ありません。要は,一連の実験で常に同様の培地を使用することと思います。カビ用培地としては穀物あるいは野菜由来成分などを含む培地があげられますが,医学領域では既製品で入手しやすいということもあり,ポテト・デキストロース寒天,サブロー寒天培地などが汎用され,本菌はこれらに良く発育します。保存に関しては,1年程度であれば絨毛変異を起こさせないという観点から,栄養分を落とした1/10サブロー寒天,すなわちデキストロース(グルコース)を約1/10量とした寒天培地(グルコース5 g,ペプトン10 g,寒天15 g,精製水1,000 ml)を作製し,全斜面培地として継代培養(2ヶ月に1度植え替え)する。または1/3〜1/4斜面培地(試験管に培地を入れ,1/3〜14の高さの部分のみ斜面とする)として,斜面全体に菌を接種し充分発育後,その斜面部をすべて覆い,さらに培地から1 cmの高さになるまで滅菌流動パラフィン(121℃,30分間高圧蒸気滅菌後に170℃, 1時間乾熱滅菌処理)を重層する方法(1〜2年保存可)がよいと思います。流パラ重層法で保存菌を採取する際は,流動パラフィン層下の菌体をカギ型白金線で掻き採り,新たな培地に接種すると復元します。その際,白金線に流パラが付着し,焼く時に飛散するので,フタつき容器にガラス粉あるはガラス玉を敷き,アルコールをいれたものを用意しておき,その中で流パラを落としてから焼いて下さい。もっと長く保存したい場合は滅菌したキャップ付き試験管に滅菌水をいれ,その中に培地に発育した菌体を培地ごと小さく切ったものをいくつか浮かせ,キャップを堅く閉めて保存する方法(数年保存可)もあります。予備実験の後,いずれかの2種類での保存を勧めます。

(北里大学・阿部美知子)

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