04/05/10
■ クロストリジウム・ディフィシル下痢症患者のベッドの消毒
【質問】
 前回, クロストリジウム・ディフィシル下痢症患者の隔離解除について質問した者です[http://www.jarmam.gr.jp/situmon/clostridium2.html]。的確な回答を頂きまして誠に有難うございました。早速委員会に報告いたしました。

 そこで新たな疑問なのですが, 患者さんの使用したベッド (シーツ) はどのような消毒がよいのでしょうか。また, 消毒の必要はないのでしょうか??? 個人的にはシーツの交換 (埃の立たないように) のみで良いような気がしますが。ちなみに当院の対応は, 患者さんの部屋にビニール手袋を置くことにし, 部屋を出る時に外してもらうようにしました。

 何度もすいませんが, 宜しく御教授願います。

【回答】
 C. difficile腸炎は毒素産生株によっておこり, 感受性のある宿主に抗菌薬を投与したことが誘因となって起こる病気であることを忘れないで下さい。

 C. difficileに濃厚に汚染される可能性のあるものはベッドで使用される便器です。便器の洗浄, 消毒には注意して下さい。医療従事者のビニール手袋着用による患者ケアーとケアー後の手洗いも極めて重要です。

 さて環境の消毒ですが, 多くの場合には, 日常的な丁寧な拭き取り掃除だけで対応可能と考えています。しかし, ひとつの病室から複数の患者が連続して出ているような場合であれば, ハイポクロライト, グルタールアルデヒドなどの殺芽胞力のある消毒薬を用いた消毒が必要となります。これ外にも, 消毒をしたほうが望ましいと考えられる場合があるかもしれません。このことと関連して, 次のような事実も知っておいて下さい。

 C. difficile 腸炎のリスク因子は, 第三世代セフェム, クリンダマシンなどの抗菌薬が投与される場合, 入院期間が長くなりそうな患者さんの場合, 60才以上の高齢者の場合などです。次に入室する予定の患者さんが, これらのリスク因子を満たしている場合, あるいはその病院にどのような患者さんが多く入院されているのかによって対応が異なる可能性もあるでしょう。また, C. difficleによる感染は, 宿主のC. difficleに対する免疫学的な状態も深く関係することがわかってきました。欧米のある報告では, 新規入院患者の中にはC. difficileに感受性の高い患者さんが一定の割り合い (報告により異なる) で存在し, 院内感染はそのような患者さんで見られること, C. difficleに対する免疫応答が弱い患者さんがいること, そのような患者さんで重症化しやすく, 再発・再燃が多いことがわかっています。既にC. difficile無毒株を腸内に保菌している患者さんでは, 発症の危険性がきわめて低い事実もあります。このようなことが日本でも今後確かめられていくと, C. difficile患者とその予防に対するアプローチが変る可能性があります。入院前に患者さんの免疫状態を知ることができれば, どのくらいクリーンな病室に入れる必要があるか判断できるということです。

(岐阜大学・渡邉 邦友)

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