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【質問】
微生物学実習のレポート課題として,『グラム染色における偽陰性と偽陽性について』というのがでました。“偽陰性”となる場合はわかるのですが,
“偽陽性”については教科書を調べてもわかりませんでした。どういう場合が考えられるのでしょうか。
【回答】
グラム染色で“偽陽性”になる場合とは, 本来グラム陰性菌が陽性に染まることを指していると思います。一番考えられることは“アルコールによる脱色不足と水洗不足”ではないでしょうか。アルコールによる脱色不足の場合は標本全体がムラとなり,
鏡検スポットを移動させると陽性と陰性が分かれて染まっていることがあります。つまりアルコールが全体に行き渡らなくて部分的に脱色され,
直ぐに水洗したためにこのような現象が起きるものと思われます。特に濃厚な喀痰,
膿などを厚く塗抹した場合や発育集落の菌苔を濃く塗抹した場合に見られます。このような場合には脱色が速やかなアセトン・アルコールによる脱色をお薦めします。また水洗ですが,
一般的には標本裏面からゆるやかな水圧で静かに洗浄するよう指示されていると思います。しかし,
うまく材料塗抹面全体が洗浄されない場合はムラができやすくなりますので, 私達は塗抹面のスライド・グラス一端から直接水を流し,
水洗しています。最近では自動染色装置が開発され, 水槽の中の流水でスライド・グラスを軽く上下させながら水洗する方法が紹介されていますので一度お試しください。また脱色法および水洗法以外で考えられることは,
一次染色液の色素種類・製造メーカー・製造ロット・使用濃度・溶媒・調整液の保管そしてヨウ素液の調整法などです。これらの組み合わせがうまく調和され,
染色手技がうまくできた場合に正確な染色判断ができることになります。グラム染色に関する細菌細胞の特質と色素との吸着性および化学的親和性に基づく染色理論については文献
[山中喜代治: グラム染色,JARMAM,Vol.12 (2),81〜90,2002]を参照ください。またこの質問箱の染色・顕微鏡検査コーナーも一度読んでください。
[http://www.jarmam.gr.jp/situmon/kensa_index.html#senshoku]
未来を担う臨床検査技師の誕生を心待ちにしています。
(大手前病院・山中喜代治)
【質問者からのお礼】
ありがとうございました。参考にさせていただきます。
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