03/01/09
■ 抗体価を測らずにワクチン接種をすることの可否
■ インフルエンザウイルス対策での気温と温度
【質問 1】
 麻疹の高い感染率と成人麻疹の重症化が問題となっている現状を鑑みると, CDCの勧告にありますように, 平時から医療従事者の麻疹抗体価の調査や免疫能のない職員へワクチン接種を勧奨することが, 病院感染対策として重要と思われます。
(前回の回答: [http://www.jarmam.gr.jp/situmon/kansen_kuuki.html])
 この部分ですが, はたして抗体価を測る意味はあるのでしょうか??? 職員 (ないし患者) が自分の麻疹, 風疹, 水痘, 破傷風, インフルエンザ, HB等々についての免疫に自信がなければ, 抗体価を測るまでもなく, ワクチン接種を受けてもかまわないと感じております。抗体価を測るにも, 疼痛・コスト3500円を含め, かなりの負担があり, 一方抗体価がある程度高くてもワクチン接種による副作用はさほど大きくなく, ブースター効果で抗体価も上昇すると思います。ただ, スチーブン・ジョンソン反応の頻度がどの位かとの不安はありますが, 実際の頻度や抗体価を測らずにワクチン接種する危険はどの程度でしょうか。

【回答】
 麻疹については, 抗体価を測定せずにワクチンを接種しても問題なく, cost effectivenessに優れているとCDCのPersonnel Health Guidelineに記載されております。しかしすべてのワクチンが同じではありません。肺炎球菌ワクチンでは2年以内のワクチンの接種は避けるべきと勧告されています。ワクチン毎の情報はWEB上で簡単に入手可能ですので (CDC: Personnel Health Guidelineなど) 接種前にご自身で調べられることを勧めます。

(琉球大学・健山 正男)
【質問 2】
 もう一つ, インフルエンザウイルスについてお教えください。

 インフルエンザウイルスは乾燥に強いのでしょうか, 弱いのでしょうか??? インフルエンザは飛沫感染です。飛沫感染するか, 空気感染するかの差は, 飛沫核になった時点で乾燥に弱いものは死滅し, 空気感染しづらく, 強いもので適度な大きさのものが生き残れて空気感染すると理解しておりました。インフルエンザウイルスについては多くの書籍で乾燥に強いため, 室内に十分な湿度を保つように書かれております。室内の湿度を高く保つべきか, 乾燥させたほうがよいのか理解できないでおります。

【回答】
 教科書的には, 「インフルエンザウイルスは高温多湿に弱く, 低温乾燥に強い, その逆がポリオウイルスで, 高温多湿を好み, 低温乾燥に弱い」とされています。これはそれぞれのウイルスの流行する季節から予想されることです。しかし, “乾燥”という言葉はいろいろに理解できます。真空凍結“乾燥”された状態にあるウイルスは極めて安定であり, 半永久的に保存できる状態ともみなされます。インフルエンザウイルスのエーロゾル感染では, 直径150μm未満の水滴が患者から発生し, 2〜3秒で水分が蒸発してウイルスを含む“乾燥した核”が形成されます。この核の中でウイルスは比較的安定です。直径5μm以上の比較的大きな核が咽頭粘膜に付着して感染が成立します。

(琉球大学・山根 誠久)
【質問者から】
ありがとうございました。御指摘のあったCDC: Personnel Health Guidelineなどを実際にあたって各ワクチンについて検討致します。
 貴重な知識を本当にありがとうございました。長くひっかかっていたものが一部非常にすっきりと理解できたように感じております。ありがとうございました。

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