02/09/05
■ 再び, 寒天培地に紫外線を照射することの可否
【質問】
 質問箱コーナーに寄せられた「“培地に紫外線を当てて使用する”ことの可否」[http://www.jarmam.gr.jp/situmon/sigaisen.html]について私の会社でも似たようなことがあったので質問させて頂きます。

 わが社で寒天培地を作成する際には,クリーンベンチ内で分注して固化させています。新入社員にやってもらった所,寒天培地の分注操作そのものをクリーンベンチ内で行っているにもかかわらず,無菌的に操作できているか自信がないということで,固化させる際に培地表面に直接紫外線を照射しています。私は経験がなかったことなので,照射しない方がいいとアドバイスしたのですが,「なぜか???」と理由を聞かれて困惑してしまいました。普通はやらない,という理由だけでは納得してもらえず,微生物の発育に何か影響が出ているのではないかと心配です。クリーンベンチ内でシャーレの蓋を開けて,ファンを回した状態で紫外線照射をして培地を固化させています。培地の性能は変わらないのでしょうか??? また,微生物の発育になにか影響はないのでしょうか。もしシャーレの蓋をしたままであれば紫外線照射をしても構わないのでしょうか。よろしくお願い致します。

【回答】
 一般的には, 紫外線は活性酸素 (フリ−ラジカル) を産出し, さらに過酸化脂質を形成いたします。これらの物質は, 特に空気と触れている培地表面で多量に形成されると考えられます。そのため, 培地の変性が生じ, 紫外線未照射の培地と比べ, 微生物に対する発育支持能が低下するものと考えられます。

 一方, もし分注時における培地へのコンタミネ−ションがあった場合, 紫外線によりその雑菌のDNAが損傷をうけ, 菌は存在するものの, 一見作製した培地が無菌のように誤って判断する可能性があります。このことを考えた場合, コンタミネ−ションがあったら, 雑菌がしっかり培地上に発育する方が良いと思います (誤りを発見する意味で)。この場合の改善点は, 無菌操作の習得です。

 以上のことより, 紫外線照射による培地分注時のコンタミネ−ションの回避は避けた方が良いと思われます。

 またプラスチックシャーレの材質は, 主にスチロール樹脂 (ポリスチレン) からなっております。この材質には若干の紫外線吸収能はあるものの, 紫外線吸収剤などは含んでおりません。そのため, 蓋をしたといっても100%紫外線の影響を除去できることはありませんので, 上記のような発育支持能が低下すると言うことも考えられます。

(日水製薬・三品 正俊)

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