■ 菌株の凍結保存について | |
【質問】
○×大学有機材料工学科の者です。微生物に関してはまったくの素人ですが, 先日より有害有機物の分解菌の培養を始めています。 初歩的な質問ですが, 菌を培養後, 洗浄 (滅菌水) を3回ほど繰り返し, 0.1 ml程度の菌に対し5 mlの5%グリセリンを添加し凍結させたところ, ほとんどの菌が死んでしまいました。これはグリセリン水溶液の量が菌に対して多すぎたのでしょうか??? 初歩的な質問ですがよろしくお願いします。なお使用した菌はRalstonia eutropha というものです。 【回答】
(1) 菌を培養後に洗浄 (滅菌水) を3回ほど繰り返した。 (2) 0.1 ml程度の菌に対し5 mlの5%グリセリンを添加した。 (3) そして, 凍結させた。 とありますが, (1) の培養菌体の洗浄についてはどこかにこの菌種の保存に際してはこの洗浄する方法が適していると示されていたのでしょうか??? なお, 通常はこのような洗浄を保存に際して実施することはありません。でも, この洗浄行為が菌の死滅促進に影響しているか否かは判りませんが。また, (2) の添加した「5 mlの5%グリセリン液」ですが, どんな根拠でそうされたのでしょうか??? 何か予備実験なり, 情報があって, このグリセリン濃度設定が選択されたのでしょうか??? 通常は, 前述したURLに示されている手法と濃度が採用されています。そして, (3) の凍結させたときの手法と温度について示されていませんが, 前述のURLを参照していただきたく思います。通常は−20〜−80℃で凍結しますが, −20℃程度では数週間からせいぜい1〜2ヶ月程度しか保存できない菌種 (Streptococcus属やHaemophilus属など)や, ブドウ糖発酵菌の−80℃保存でも凍結方法によっては死滅しやすい菌種(Vibrio属やHaemophilus属など)など, またブドウ糖非発酵菌でも死滅しやすい菌種(Burkholderia属など)が知られており, ご質問のRalstonia eutrophaに関してのデ−タは回答者の検索でも皆無でした。 そもそも菌の性質やら利用法を探るような研究を行う場合にあっては, 自らがその菌に関する安定的な取り扱い方法を試行錯誤して会得することから進めるのが王道です。供試菌株に種々の付加や処理を施して得た「変異株」も研究の過程で発生するでしょう。その「変異株」を次の実験まで安定した状態で保存することは不可欠ですが, その保存法は菌種による扱い方以外にも, 菌株やその得られた「変異株」によって安定した保存法が異なるかも知れません。 なお, 繰り返しになりますが, グリセリン液に浮遊させて凍結保存する場合, 滅菌水での洗浄操作は通常行われるやり方ではありません。でも, ご質問の菌種については「洗浄した方が保存率はよくなる」のでしょうかと疑問も湧いてきたところなのですが, この疑問も含めて, いくつかの角度から視点を変えた実験で最適な保存方法を見つけていただければと思います。そして本菌種が本当に死滅し易いのなら, その最適な保存法を確立して論文として発信していただければと思います。 (信州大学・川上 由行)
【質問者からのお礼】
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