04/01/27
■ NASA規格 0.5μmの意味は???
【質問】
 食品工場に勤める検査担当者です。食品製造環境を測定するのに, パーティクルカウンターで塵埃数を測定したのですが0.5μmの粒子を基準とすると聞きました。確かにNASA規格はこの0.5μmの粒子数でクラス分けをしているようですが, 何故0.5μmなのでしょうか。細菌の大きさがだいたいこの大きさだからとも聞いたことがあるのですが, それだけですか。0.5μmの粒子を基準とする明確な根拠は何なのでしょうか。

【回答】
 「クリーン−ムにおける塵埃数のクラス表示」に関するご質問ですが, ARMAM 質問箱「http://www.jarmam.gr.jp/situmon/clean_room.html」への追加質問と受け取らせていただき, 以下に簡潔にお答えいたします。なお, 規格の概要などで重複する事項については, 上述の URL の ARMAM 質問箱に回答されているので割愛させていただきます。

 では, なぜモニタリングする浮遊粒子の大きさが 0.5μm (米国連邦規格), あるいは 0.1μm (JIS規格) かということですが, 格段にその根拠を問うこと自体がいささか的外れで, しかもナンセンスなのかも知れませんね。そもそもこの規格は, クリ−ンル−ムの清浄度を評価するための尺度でしかないのです。つまり, ある環境の清浄度を数値的に評価するためのものなのです。NASA 規格 (NHB 5340,2) は, 米国連邦規格 (Federal Standard 209) により 0.5μm の大きさの粒子数に相関した菌数 (CFU) を示していますが, ただそれだけに過ぎないのです。確かにバクテリアのサイズに関しては, 短径 0.5μm 前後のものが多いので, この粒子径を目安に浮遊粒子を計測すれば, 生物学的な清浄度を反映させることが出来るのでしょうか。要するに, ある事象を比較評価するためには, 一定の「ものさし」が必要なことはご理解いただけることかと思いますが, クリ−ンル−ムなどにおける性能表示の一つとしての「ものさし」がクラス表示であり, その測定対象物が各規格における一定の大きさの浮遊物質数 (塵埃数) ということです。これらの規格を制定するに至った経緯については, 残念ながら存じませんが, 恐らくは質問者が述べられている通り, 細菌の大きさに由来することが第一の根拠として挙げられるのではないかと推測されます。また, 実際の浮遊細菌数と0.5μm 以上の径を持つ浮遊粒子数との相関関係から得られたデ−タに基づいた菌数が NASA 規格における浮遊菌数ですので, 0.5μm 以上の浮遊粒子をカウントすることによって生物学的クリ−ンル−ムの清浄度評価として利用されるに至っていることと思われます。

 なお, 実際に顕微鏡下において細菌は, 短径 0.3〜0.6μm 位の大きさで観察されます。また環境中の微生物は, 塵埃などに付着して存在していることも多いと思います。このことが規格の根拠であろうことは, 質問者も述べられている通りで, それ以上の「明確な根拠」について明示し得なかったことをお詫び申し上げます。

 いずれにしても, 確固たる根拠を求めるのは無理があるというものではないでしょうか。               

(信州大学・川上 由行)

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