03/11/14
03/11/19
■ PCRを用いたレジオネラの定量に関して
【質問】
 拝啓 前回はご丁寧な解答ありがとうございました[http://www.jarmam.gr.jp /situmon/pcr_cfu.html]。前回に引き続きレジオネラに関する質問をさせて頂きたく, メールを致しました。

 リアルタイム定量的PCRを用いたレジオネラの検出/定量に関する文献を読んでいますと, 検出/定量結果に, ○○ Cells/100 mLという表現が見られることがあります。ということは, レジオネラのゲノム解析は既に行われているということでしょうか??? そうであれば, 種によって16S rRNA遺伝子の数は変わらないのでしょうか???

 リアルタイム定量的PCRで検出された16S rRNA遺伝子のcopy数からCell数への換算に関しまして, ご教授頂ければと存じます。(前回のご教授から, PCRを用いた場合, 死菌由来の遺伝子も検出してしまうことは十分に承知致しております。また, PCR 法による検出で厚生労働省の通達を満たすかどうかの質問ではございません)

 以上よろしくお願い致します。

【回答】
 前回の私の回答に関連するご質問をいただきました。簡潔にお答え申し上げます。

まずはレジオネラのゲノム解析ですが, 行なっている研究機関は恐らくあると思います。そして, 16S rRNA遺伝子の数は変わらないと考えます。変わるという報告を見聞したことはありません。

また, リアルタイム定量的 PCR で検出された16S rRNA遺伝子の copy 数から cell数への換算に関してのご質問ですが, PCRで増幅した領域を, TA クロ−ニングベクタ−に挿入して (必ず1コピ−入ります), そのプラスミドを大腸菌で増やしてから精製回収します。挿入したプラスミドの分子量はあらかじめ分かっておりますので, 260 nm の波長から求めた濃度と分子量で容量当たりのモル数が算出でき, アボガドロ数を掛けることにより容量当たりの分子数=プラスミド数 = CFU が分かるということです。これの10の1乗〜6乗くらいの濃度を作成し, 検量線の標準液として用います。つまりは, 描かせた検量線から, ○○ CFU/100 mL (○○ cells/100 mL) が求められるのです。こんな説明で宜しいでしょうか。

(信州大学・川上 由行)

【追加質問】
 いつも丁寧なご回答ありがとうございます。リアルタイム定量的PCRによるレジオネラの定量に関してですが, 前回の解答で, “16S rRNA遺伝子の数は変わらないと考えます”とありますが, 私は微生物は種によって16S rRNA遺伝子の数が変わると認識しております。本回答は「レジオネラに限っては」という考えでよろしいのでしょうか???

 現在私は, ピコグリーンで予めレジオネラPCR産物のcopy数を測定し, それを段階的に希釈して検量線としております。その後リアルタイム定量的PCRで測定することで, 試料中のレジオネラ16S rRNAのcopy数を求めています。前回の回答からは, 求めたcopy数がそのままcell数として用いることができる (つまり, レジオネラ菌1細胞が持つ16S rRNAは1つ) という風に私には理解できるのですが, そのようなご回答でよろしかったでしょうか???

私の見当違いでしたらお許しください。

【回答】
 前回の私の回答に対するご質問と受け取らせていただきます。

例えば, 大腸菌 (Escherichia coli) の場合は7個というように, 確かに菌種によって16S rRNA遺伝子数は異なります。まったくご指摘の通りで, どうも私の回答は少々軽率だったようです。ご迷惑をおかけすることになってしまいました。どうかご容赦ください。

 ただ, 同一菌種あるいは同一株について, 菌数の消長を経過を追って観察するのであれば, 一細胞当たりの16S rRNA 遺伝子数の多少は許容誤差範囲内に納まってしまうと考えられることから, 前回の私がご説明申し上げた方法で測定可能でしょう。しかし, 貯留水 100 ml の中にどのくらいの菌数がいるかということを推定するのであれば, レジオネラに特異的な領域 (種特異性ではなくて, 属特異性を有する領域) を用いて定量するしか方法はないと思います。

 最後にもう一度, 質問者のご指摘のとおり, 当方の回答に不充分な点があったことを重ねてお詫び申し上げます。

(信州大学・川上 由行)

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