05/07/19
■ “赤ちゃん”と非結核性抗酸菌
【質問】
 57歳の母が去年, 非結核性抗酸菌症MACと診断されました。妻がもうすぐ出産予定で, 主治医の方に“赤ん坊に感染しないですか???”と母が聞いたところ, あやふやな回答・・・もともと神経質の心配性で, そのため妻にもほとんど接触をしない状態です。“赤ん坊は免疫力が弱いから”と思い込み, 私たちも心配になり色々と調べてはいるのですが・・・なかなか完治しない病と聞いております。赤ん坊に接触できないのもストレスになると思います。長時間の接触は避けたほうがいいですか??? 接触する際の予防策や注意事項を教えていただければと思います。よろしくお願いします。

【回答】
 お母さんの子宮のなかにいる胎児は全身どこにも細菌がいない, 厳密な意味での“無菌動物”です。この“無菌動物”が, まずお母さんの産道を通る際, 初めて細菌に接触し, それ以後, いろいろな細菌にさらされて“有菌動物”になって行きます。そういう意味からすれば, 子宮を出てから後に獲得したすべての細菌は自分を取り囲む環境から侵入してきた外来性のものです。貴方自身もそういう経過を経て, “全身細菌だらけ”の身になってきたのです。でも, なにも不自由は感じないでしょう。

 非結核性抗酸菌は現在のところ, ヒトからヒトへ直接伝染することはないとされています。また“家族内感染”も認められていません。この「質問箱」で既に何回か反復して回答してあります[http://www.jarmam.gr.jp/situmon/hito-hito.html]。ただ, “伝染しない”ということは, “伝染した”という明確な事例がないということであり, 将来, ヒトからヒトへ伝染するということが科学的に証明されるかもしれません。とはいえ, もしそのような事例が確認されても, これまでの長い間, それを証明できなかったということは, そのような伝染は極めて稀であると予想されます。

 生まれてくる無菌動物の赤ちゃんは, お母さんの産道から始まって, いろいろな細菌と接触するでしょう。非結核性抗酸菌もそのひとつになる可能性は皆無ではありませんが, お婆ちゃんから感染して直接発病する (家族内感染の) 可能性は極々低いものでしょう。後は, 皆さんの気持ち次第です。

(琉球大学・山根 誠久)


[戻る]