05/04/14
05/04/21
Brevibacillus brevis の熱抵抗性について
【質問】
 はじめまして。殺菌機メーカーのものです。研究会ホームページ質問箱に掲載された質問[http://www.jarmam.gr.jp/situmon/bacillus_brevis.html]のBrevibacillus brevis についての質問・回答はとても参考になりました。私ももう少し詳しく知りたいので教えていただきたいのですが・・・別の文献で, この菌のD値が90℃で4.4〜6.6とありました。121℃で15〜20分間の処理は必要ないと思うのですが, どうでしょうか??? この菌の熱抵抗性について詳しい文献, 論文をお知りでしたらご紹介いただけませんか???

【回答】
 質問文に「4.4〜6.6」とありますが, 単位がありません。当然, minute (分) ですね。さて最初の質問ですが,「121℃で15〜20分間の処理は必要ない」というのは, 何のために必要ないのかが不明確です。“滅菌するのに必要ない”ということなのでしょうか??? だとしたら, 回答は「必要です」よ。D値が90℃で4.4〜6.6分ということは,「90℃で4.4〜6.6分」で生菌数がただ単に「十分の一」に減少するだけの話です。Brevibacillus brevis の菌体がすべて栄養体で, 芽胞でないのであれば別ですが, 芽胞をもつ菌体が例え少数でも存在すれば (常識的には存在すると考えるのが自然でしょう), これらを“滅菌する”には121℃で15〜20分間の処理は不可欠だと考えます。

 次の質問ですが, Brevibacillus brevis の熱抵抗性についての論文は, 回答者も探してみましたが, これといった文献を検索することが出来ませんでした。恐らくは, 同じように芽胞をもつ近縁の有芽胞菌と大差ないのではと考えますが・・・この点, お役に立てなくて申し訳ありません。

(信州大学・川上 由行)
【追加質問】
 ご回答ありがとうございました。D値という値と殺菌条件の決めかたの関係があまり理解できていませんでした。D値は“その殺菌温度で生菌数を10分の1にする時間 (分) を表す”だけということですね。そこであらためて質問ですが・・・例えばこの菌ですと, 90℃のD値が5分だったとすると, 121℃でのD値は何分になるのかを知るには, 生菌数を調べるテストを実際, その温度でしないと分からないのでしょうか??? それとも, なにか数式で算出できるのでしょうか??? よろしくお願いします。

【回答】
 端的にお答えします。D値は計算式で算出できるものではないと思います。つまり,「90℃のD値が5分だった時, 121℃でのD値は何分になるのか???」は, 実際に生菌数を調べるテストを実施し, そのデータから初めて導き出されるものだと思います。
 なお, 121℃のD値を知ることの意味は何でしょうか??? 121℃でしたら, 15〜20分で完璧に滅菌できることが分かっているのですから・・・
(信州大学・川上 由行)

 D値を求めるためには, まずある特定の温度での熱死滅速度恒数 (k) を求めることが必要です。ある特定の温度でのkは以下の式で定義されます:
k = log (N1/N2)× 2.303/(T2―T1)
(T1, T2は加熱処理時間, N1, N2は加熱処理した後の生残菌数)
この式で(N1/N2 = 10) とすると, D値 (T2―T1) は[D = 2.303/k] として算出されます。従って, D値を求める際には,[T2―T1]が有意の値になる程度の試験温度と生残菌数が必要です。

(琉球大学・山根 誠久)

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