05/07/12
■ セレウス菌下痢毒とBacillus thuringiensisについて
【質問】
 はじめての質問です。よろしくお願いします。

(1) セレウス菌下痢毒は芽胞形成期に生成されると聞きましたが, 32℃培養時の芽胞数と栄養細胞数の経時変化, その時産生される下痢毒素量に関する文献はございますか???

 また, 使用する培地・菌液を添加する食品や培養温度によって産生される毒素量も異なるのでしょうか???

(2) 逆受身ラテックス凝集反応による毒素検出検査の留意事項に, BHI培地・32℃で20時間を越えると毒素が検出されない場合があると書かれています。プラス (陽性) がマイナス (陰性) になるのは何故でしょうか。

(3) セレウス菌と生化学性状・NGKG培地上での生育状況がまったく同一といわれるBacillus thuringiensisの結晶体毒素は, 「食品衛生検査指針」微生物編 (1992年版) に記載されている方法では“確認が難しい”と聞いています。セレウス菌との確実な鑑別法はないのでしょうか。またこの菌種名は何と読めばよいのでしょうか???

【回答】
(1) セレウス菌下痢毒量に関する文献は, 例えば[Haggblom, M.M. et al. Quantitative analysis of cereulide, the emetic toxin of Bacillus cereus, produced under various conditions. Appl. Environ. Microbiol., 68 (5), 2479〜2483, 2002]があります。

使用する培地・菌液を添加する食品や培養温度によって産生される毒素量も異なります。次の文献を参考にしてください。[Agata, N., et al. Growth conditions of and emetic toxin production by Bacillus cereus in a defined medium with amino acids. Microbiol. Immunol., 43 (1): 15〜18, 1999]や[Ultee, A., and Smid, E.J. Influence of carvacrol on growth and toxin production by Bacillus cereus. Int. J. Food Microbiol. 64 (3): 373〜378, 2001]。

(2) 一般的に, 培養によるセレウスのエンテロトキシン産生のピ_クは10時間前後で, 20時間を越えるとセレウスの酵素によりエンテロトキシンが分解され始めるためだと考えられます。逆受身ラテックス凝集反応による毒素検出キットを製造している会社に直接問い合わせることをお勧めします。

(3)「質問箱」の回答, “Bacillus cereusB. thuringiensisの鑑別同定”[http://www.jarmam.gr.jp/situmon2/bacillus-kanbetsu.html]にB. thuringiensisの毒素結晶の写真と検出方法 (そのコツ) を掲載しました。参照ください。ドイツのThuringia (テューリンゲン州) が名前の由来ですから, セレウス菌に対してチューリンゲンシス菌と呼称できますが, 通常は単に“チューリンゲンシス”と呼んでいます。

(日水製薬・小高 秀正)


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