05/01/04
05/02/15
■ 大腸菌群の定義について (食品衛生法と乳等省令)
【質問】
 「大腸菌群の試験結果について」の回答内容に関連して, 横から質問させていただきます。大腸菌群の定義に関するものですが, よろしくお願い申し上げます。

 回答では, 大腸菌群の定義のうち, 乳糖分解から産生されるものとして酸とガスをあげておられます[http://www.jarmam.gr.jp/situmon2/daichokingun-shiken.html]。食品衛生法の食品, 添加物等の規格基準に記載されている定義も“酸とガス”です。しかし, 乳等省令における定義では“ガスのみ”となっています。食品衛生法と乳等省令で定義が異なるのはどういう理由によるものしょうか。ご教授いただきたく, よろしくお願い申し上げます。

 あと, 質問者が検査されたものが“ガスのみ陽性”のため「陰性」という回答ですが, 検体が乳等省令において大腸菌群規格が定められている検体であれば, 乳等省令の定義に従い“LB陽性”になると思います。

以上, よろしくお願いします。

【回答】
 総合食品辞典 桜井芳人編 (同文書院) によりますと, 乳等省令は食品衛生法施行規則 (昭23厚令第23号) と切り離して新しい厚生省令を作製しようとの気運が起こり (米国では製乳衛生が重視されており, 食品衛生一般とは別個の担当者によって管理・監視などが行われている実情を知ったため), 昭和25年10月に「乳、乳製品及び類似乳製品の成分規格等に関する省令 (厚生省令第58号, いわゆる“旧乳等省令”)」として公布されました。さらに1年後, 昭和26年12月27日 (今から53年前) に現行の「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令 (厚令第52号)」が公布されました (制定にあたっては, 当初乳児ならびに病弱者のための製品に品質確保に注意が払われた)。以上のことから推察しますと, 従来の食品衛生法とは別に作られたため, 大腸菌群の検査法が違ってしまい (乳等省令では, 普通ブイヨンに乳糖を加えた培地を乳糖ブイヨンとし, 他方食品衛生法ではBTB加乳糖ブイヨンを使う) 定義の中の「酸」の表記のある/なしが出てきたものと思います。

 前述のように乳等省令では, 普通ブイヨンに乳糖を0.5%の割合で加えた培地を“乳糖ブイヨン”としていますので, 「ガスのみ」しか判定できません。しかし, 質問者は「培地が黄色に変色しなかったものがありました。また, 普通寒天で検出されたコロニーのグラム染色を行ったところ, “青色”でした。」と述べていて, BTB加乳糖ブイヨン (食品衛生法の食品, 添加物等の規格基準に記載されている) を用いていることから, 乳等の食品以外だと考えられました。さらに, グラム染色で“青”はグラム陽性で, グラム陰性ではありません。以上のことから「陰性」という回答を出しました。

(日水製薬・小高 秀正)

【読者からのお礼】
 ご回答いただき, ありがとうございました。大腸菌群の定義については, ご紹介いただきました文献を自分でも確認してみます。毎々丁寧な回答をいただき, ありがとうございます。これからもいろいろとお世話になることと思いますが, よろしくお願い申し上げます。

【追加質問】
 以前いただいた回答[http://www.jarmam.gr.jp/situmon2/daichokingun-teigi.html]で確認させていただきたいことがあります。

 回答の内容は,「総合食品辞典 桜井芳人編 (同文書院)」をもとにした回答と理解しております。自社にも同じものがあったため目を通してみたのですが, 回答内容を示している箇所がわかりません。お手数ですが, 回答に該当する箇所をお知らせいただけますと幸いです。いつもお願いばかりでまことに申し訳ありませんが, よろしくお願い申し上げます。

【追加回答】
「総合食品辞典」昭和61年5月5日第六版の700頁, 「乳等省令」をご覧ください。

(日水製薬・小高 秀正)


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