05/11/24
05/12/02
■ グラム染色用の検体保存
【質問】
 私は地方の中核病院で研修医をしております。研修の一環として“喀痰のグラム染色”を習得したいのですが, 時間的に業務終了後の夜中にしか作業をできません。そのため検体を保存しているのですが, 検体を冷蔵庫, または技師さんにスライドグラスに塗ってもらったものを後で染めています。これらの方法では正しく染色できないでしょうか??? どうしたら業務終了後にうまく染色できるでしょうか???

【回答】
 質問内容に示されている保管方法と処理方法で問題ありません。淋菌やビブリオ属菌は冷蔵保管で死滅する場合もありますが, 喀痰を含む通常の検査材料の一時保管は密封容器に入れ, 冷蔵庫で十分だと思います。また, スライドグラスに塗抹し, 1分間程度のメタノール固定を施しておけば, 夜間での染色に利用しても差し支えないでしょう。また, 染色がうまくいくかどうかの問題と感染症の推定判断は別問題であり, 染色の良し悪しは, グラム染色の方法と手技によって異なります。私どもは古くからグラム染色B & M法を推奨しており, この質問箱でも紹介してきましたのでお試しください[http://www.jarmam.gr.jp/situmon/b%26m.html]。喀痰所見からの感染症推定については, 感染初期の正しいサンプリングと適正な肉眼的・顕微鏡的判断が大切であり, 呼吸器感染症の原因微生物の種類毎の鏡検像を数多く習得しておくことも重要だと考えます。

 感染症, 特に細菌や真菌感染症の迅速診断に最も有用な検査が顕微鏡検査であり, グラム染色の鏡検は必須で, 基本的なベットサイド検査のひとつと考えます。微生物検査室のない施設では, 担当医自らがグラム染色を行い, 鏡検し, 判断されることを願っています。その理由として, (1) 患者状態をすべて把握している担当医こそが適正に判断できること, (2) 納得して検体採取ができ, 速やかに検査できること, (3) 鏡検と同時に, 次の検査や治療方針が立てられること, (4) 無駄な検査を省き, 患者負担を軽減できることなどが挙げられます。もちろん, 検査技師のいる施設では, 担当医と同等の価値観で検査に従事しておりますので, 信頼して検査を依頼してください。

 最後に, 熱心にグラム染色を行っている姿にエールを送りたいと思いますが, 研修医の期間のみならず, ベテランになってからも, ぜひ続けてください。

(大手前病院・山中 喜代治)


【質問者からのお礼】
 丁寧なご回答ありがとうございます。これからもがんばります。


戻る