04/10/12
■ 細菌検査室のバイオハザード対策
【質問】
 500床程度の病院の検査技師です。今度新病院の構築として細菌検査室をどのようにするか悩んでいます。将来的にはPCRも考えてほしいとのことです。まず部屋のバイオハザード対策, P2レベルの部屋のなかにP3レベルの部屋をつくる・・・結核病棟はありませんが, 必要なのか否か。定点病院でもありません。部屋の広さや位置はまだ決まっていません。ある事情で先輩の方が突然やめられて, あまり詳しく細菌を知らない私に新病院構築の話がやってきて, 気が動転し, しかも前任者から話もきける状態ではなかったため, 1から勉強して, 今年いっぱいくらい迄にまとめないといけないという, とても辛い状態です。このコーナーを見つけて、天にもすがる思いでメールを書いています。

 業務内容は, 一般細菌・塗抹・培養・感受性 (MIC測定), 結核・塗抹 (集菌法)・培養 (小川法), 嫌気培養, 炭酸ガス培養などの日常業務を行っています。まず, バイオハザード対策ですが:

(1) 前任者が“レベル2の部屋の中にレベル3の部屋を設置する”という形式にしてあるのですが, これは必要なのでしょうか。

(2) レベル3の部屋で, 検体の塗抹・培養・染色など行うようにしているのですが, 菌を選んで純培養し, 感受性もこの部屋のなかでしたほうがよいのでしょうか???

素人のような, こんな質問でほんとうに申しわけありません。どうぞよろしくお願いします。

【回答】

 大変, 難しい問題です。どのように計画し, 実現させるのかを決めるのにいくつもの要因がからんできます。病院の将来計画など・・・

(1)“レベル2の部屋の中にレベル3の部屋を設置する”という考えは, 間違っていないと考えます (もし充分なお金があれば)。集菌法での結核菌の培養を実施しているのですから, その計画は妥当だと考えます。貴方の施設で, そのような計画が実現されるのは, 多くの細菌検査室からみれば羨ましい限りでしょう。理解のある上司に恵まれていますね。ただ, 覚悟して欲しいのは, “使い勝手は悪くなりますよ”ということです。継続してレベル3の部屋を使うという強い決心が必要です。

(2) 通常の細菌検査室でもっとも注意しなければならないのは, “結核菌と糸状菌”です。理由は, いずれも空気感染だからです。レベル3の部屋をただ単なる物置きにしないためには, これらふたつの菌はレベル3で取り扱っては如何でしょうか。通常の細菌まですべて, レベル3で取り扱うのは非現実的だと考えます。

 もうひとつ追加して回答しますが, 遺伝子増幅 (PCR) のためにレベル3という発想には認識に混乱があります。PCR検査では, 検体間の, あるいは試薬へのコンタミネーションが大きな問題です。“PCR検査には3つの分離された部屋が必要です”という勧告は, このコンタミネーションを防止するのが主目的です。バイオハザード対策よりも, 特に試薬調製の場には“クリーンさ (高い清浄度)”が求められます[http://www.jarmam.gr.jp/situmon2/vio-clean-bench.html]。

(琉球大学・山根 誠久)

【質問者からのお礼】
 細菌検査室のバイオハザード対策について質問した者です。早々に御回答がいただけるなんて夢みたいです。確かにレベル3の部屋ですべて検査するというのは非現実的であり, 使い分けをするべきなんですね。結核と糸状菌はレベル3, その他はレベル2という具合に・・・そして, PCRの件ですが, 他の病院に見学にいきました。私自身, 採算面からすると外注にした方が良いと考えているのですが, 将来, さらに改良され, もっと簡単に, 低コストで検査されるようになるかもしれないという期待を込めて, 部屋だけは確保しておかなければと考えています。おそらく, 理想どうりの細菌検査室は無理かもしれませんが, 将来の後輩たちの為にもなんとかレベル3の部屋は作ってもらいたいなと考えています。少し先が見えた気がします。本当にありがとうございました。また分からないことがたくさん出てくると思います。その時は, 御助言よろしくお願いします。
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