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【質問】
●●病院小児科及び院内感染委員の■■と申します。よろしくお願いいたします。
5ヶ月前, 保育士を目指す女性の実習前の健康診断で便よりO25を「1+」検出しました。症状はありませんでしたが,
当院内科にて抗生剤を4日間投与され, その後の検便にて菌陰性を確認されています。今回その女性が他施設への実習のため,
再び便培養検査をしたところまたO25を「1+」検出しました。今回も症状はなく,
生肉なども食べてはいないそうです (調理はした)。乳幼児のいる施設へ実習に行く前に再度除菌が必要でしょうか???
また, 原因検索に関してや今後のこの女性への対処など, ご教示いただければ幸いです。
【回答】
困った問題ですね。以前にバシラス・セレウス菌が陽性となり, 介護体験実習を拒否されたという事例に回答しています。基本的な考え方はこれと同じです[http://www.jarmam.gr.jp/situmon/bacillus_yousei.html]。結局,
実習生を受け入れるか否かという決定は受け入れ施設のポリシーですから, 科学的な妥当性うんぬんという問題ではないと考えます。ただ最近,
微生物に過剰に反応する世相があり, 必要以上に微生物 (MRSA, B型およびC型肝炎,
病原性大腸菌など) を保有する者を差別する傾向があります。個人的には, これは“感染症ハラスメント”ではないかとも考えています。この学生の場合,
抗菌剤を投与して一時的にO25は陰性化 (検出限界未満)したものの, その後再び同じ菌が検出されたということですから,
生後に獲得した固有の腸管細菌叢を構成しているかもしれません。確かに, エンテロトキシンを産生する毒素原性大腸菌
(ETEC) のO抗原リストのなかにO25がありますので, 一応エンテロトキシン産生の有無を検査し,
それから対応を考えるということになると思います。原因検索は定期的に検便を行って推移を観察する,
陰性化を図る目的で抗菌剤の投与は避けたほうがよいと思います (ただ, 実習受け入れ施設への対応として仕方なく投与せざるを得ない場合もあると思いますが)。
(琉球大学・山根 誠久)
【質問者からのお礼】
ご回答有難うございました。大変参考になりました。今後ともよろしくお願いいたします。
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