05/01/11
■ PCR検査室の設計条件について
【質問】
 初めてご質問させていただきます。私はクリーンルーム,バイオハザード実験室を設計,施工する会社に勤務する者です。このホームページの趣旨から少し逸れるかも知れませんが,お教えいただければ幸いです。

 先日客先より,“保健所でPCR検査を実施するための実験室”を提案するよう依頼されましたが,弊社ではこのようなご依頼を頂いたことがなく,また社内にも微生物学や遺伝学に詳しい者がおらず, 返答しかねております。

 そこで,次の質問です。

(1) PCR法を用いた実験には,どのくらいの空気清浄度が必要なのでしょうか。
(2) または,バイオハザード対策にする必要があるのでしょうか。
(3) 室の条件は細菌・ウイルスの種によって異なってくるのでしょうか。
(4) PCR法を用いた実験を行う部屋について,指針や条例があるのでしょうか。

 書籍なども, 実験方法や報告について記載したものがほとんどですが,貴ホームページでPCRを行う部屋について触れられているのを見つけ,[http://www.jarmam.gr.jp/situmon2/kensasitu-biohazard.html]どうか知恵をお借りできないかと思い,メールにてご質問致した次第です。立場上, このようにご質問申し上げるのは恐縮かとは存じますが,よろしくお願い致します。

【回答】
(1) PCR法を用いた実験には,どのくらいの空気清浄度が必要なのでしょうか。

 PCRの施設では通常の検査室および実験室の環境で十分です。PCRではその特殊な高感度性により, 実験工程により実験場所を3つのエリアに限定します。“エリア1”は通常, 試薬類を扱い, 陽圧のクリーンベンチ内で作業を実施します。“エリア2”では, 生物試料からのDNAあるいはRNA抽出を行いますので, “安全キャビネット”を用います。“エリア3”ではPCRを実施し, 増幅されたDNAの検出を実施しますが, 通常の実験室であれば特別な環境は不要です。一般に, エリア1と2を同室とし, 異常な増幅産物が検査試料に混入しないようにするために, エリア3を別室としています。両方の部屋はパスボックスなどで連結すると便利です。

(2) または,バイオハザード対策にする必要があるのでしょうか。
 ヒト由来生体試料を用いる場合, すべての試料に感染性があると考え, バイオハザード対策は必須です。

(3) 室の条件は細菌・ウイルスの種によって異なってくるのでしょうか。
 扱う試料によってバイオセイフティーレベルがあります。詳しくは国立感染症研究所の規定を参照下さい。

(4) PCR法を用いた実験を行う部屋について,指針や条例があるのでしょうか。
 公的機関から発行された指針や条例はありませんが, 回答 (1) で記載しましたように, 一般にクロスコンタミネーションを防止するためにエリアを分割することが実施されています。同様な理由で, エリア1+2とエリア3の空調は別系統が望ましいとされています。また, それぞれの部屋には更衣などのための前室があるとよいでしょう。 その他, 廃棄についてはすべて“医療廃棄物”とすることをお勧めします。

(ロシュダイアグノスティックス・佐々木 政人・林 邦彦)

【質問者からのお礼】
 お世話になっております。先日PCR検査を行う環境についてご質問させていただきました。あまり知識のない私にも大変分かりやすく御回答いただき, ありがとうございました。社内にも, ここまで詳しく理解している者がおりませんでしたので, 非常に助かっております。客先へご提案する際に, 是非参考にさせて頂きたいと思います。大変略儀かとは存じますが,メールにて御礼申し上げます。


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