04/11/16
■ 「細菌とヒト生体の係わりに関する言葉の意味」に関して
【質問】
 「細菌とヒト生体の係わりに関する言葉の意味」の回答を読ませていただきました[http://www.jarmam.gr.jp/situmon2/saikin-to-hito.html]。これに関連し, 3点の質問をお願いします。

(1)“内因性感染”とは, 自己常在菌が本来の常在場所以外の組織に侵入して起こした感染症。“日和見感染”は, 自己常在菌が本来の常在場所で, 宿主の免疫機能の低下が原因で起こす感染症。という理解でよいでしょうか???

(2) これだと, 日和見感染の原因は 「自己常在菌」と限られてしまい, 定義としては非常に狭義になるように感じます。日和見感染の定義として正しいものがあれば教えて下さい。

(3) ヘルペスウイルスのように, 一度発症した後に潜伏し, 宿主の免疫機能の低下により再発症した場合はどう表現すればよいか教えてください。遅発性感染症とは少し違うように思いますし・・・今までは「宿主の免疫機能の低下」なので“日和見感染”と簡単に考えていましたが, 「常在」とは呼べない病原体の場合, よくわからなくなりました。

 いろいろ調べてみましたが, 本の発行年代によっても, 細かいニュアンスや定義が違い, つぎはぎに集めて自分なりに理解すると, 何か大きな思い違いをしているように思い, 不安を感じています。ご指導, よろしくお願いします

【回答】

(1)“内因性感染”について
 宿主に原因する感染症であり, その感染様相はさまざまです。私が質問に答えている部分は, わかり易く, “例え”として挙げたものです。内因性感染について言及するならば, さらに広範囲になり, 複雑となります。恐らく成書においても, 内因性感染について定義づけしたものはないでしょう。内因性感染には, 宿主側での先天的や後天的な免疫不全, 好中球減少, リンパ球減少, 基礎疾患 (悪性腫瘍, 糖尿病など), 栄養不良や年齢などの易感染性因子も関係します。難しく考えると整理がつかなくなります。わかりやすく, 「内因性感染とは, 宿主に原因があって起こる感染症」と理解して下さい。日和見感染と共通する部分がありますが, 同一のものではありません。「日和見感染とは, 宿主の感染防御能が低下した状態で起こってくる感染」です。

(2)“日和見感染”は, 自己常在菌が本来の常在場所で, 宿主の免疫機能の低下が原因で起こす感染症という理解でよいでしょうか。

 日和見感染は, 宿主の免疫機能の低下が原因で起こす感染症という部分の記載についてはそのとおりです。しかし, “自己常在菌が本来の常在場所で”の部分には誤解があります。自己常在菌や常在場所と日和見感染とは関係がありません。何故, 日和見感染の原因を自己常在菌とするのですか。

(3) ヘルペスウイルスの再感染・・・について
 非顕性感染, 顕性感染の区別, 発症と再感染について, 常在菌 (正常細菌叢, 腸内細菌叢) について学んで下さい。常在菌はヒトが健康な生活をする上で重要な働きをしています。

 質問の内容からは, 十分に知識が整理されていないようですので, 時間をかけて感染症の学習をして下さい。

(近畿大学・古田 格)


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