06/02/08
■ “Semi-nested PCR”の長所と短所
【質問】
 ○○大学農学部の●●です。現在semi-nested PCRに関する論文を読んでいますが, nested PCRと比較したときのsemi-nested PCRの長所・短所とは何でしょうか???

【回答】
 まず最初に, この「質問箱」の“遺伝子検査”の中に収納されている質問, “特殊なPCR法???”http://www.jarmam.gr.jp/situmon2/tokushu-pcr.html]を参照ください。この内容を踏まえて, 回答します。

 PCRには増幅領域をはさむ1セットのプライマーが必要です。

(1) 準備したプライマーセットで目的とする増幅産物が得られない場合, 
(2) あるいは得られても, その純度が低い場合には, さらに内側の配列からプライマーを考案し, “nested PCR”をする必要があります。nested PCR も通常は1セットのプライマーで実施しますが, プライマーのデザイン上の問題により, 場合によっては片方しか準備できないことがあります。その原因としては, 例えば:

(1) 増幅領域内がGCリッチあるいはATリッチの場合,
(2) 塩基配列が他の遺伝子とよく一致している場合, 
(3) プライマーダイマーが生じてしまう場合などです。

 初回のPCRとnested PCRにより, 合計4種類のプライマーを用いる場合にはそれぞれの相互作用を考慮する必要もあります。各プライマー設定領域が十分に取れる長い配列を増幅する場合にはほとんど問題がないと思います。

長所としては:
(1) 共通のプライマーが使えることから, ランニングコストが安くできる,
(2) 増幅する領域の配列上に, 上記の理由から1セットのプライマーを用意できない時でも, 特異性を向上させることができるなどがあげられます。

 ある遺伝子の発現解析において, 共通のエクソンに共通プライマーを設定し, オルタナティブ・エクソンにそれぞれのプライマーを準備することで, 効率よく発現解析ができた経験があります。特異性の部分では, 通常のnested PCRよりは劣ることになりますが, 目的が達成されれば, 短所はないのではないでしょうか。

(ロシュ・ダイアグノスティックス・佐々木 政人・林 邦彦)


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