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【質問】
はじめまして。基本的なことで恐縮なのですが, 質問させていただきます。
現在, Streptococcus mutansをはじめとする口腔内細菌の培養および実験を行っているのですが,
先日「S. mutansなどは同じ菌を培養する場合でも, 液体培地で培養した場合と寒天培地で培養した場合とで性質
(性状) が異なる」というお話を耳にしました。文献を探してみたのですが,
検索したキーワードが不適切なのか, なかなかみつからず, 詳しく調べる術がありません。参考文献なども教えていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【回答】
“液体培地で培養した場合と寒天培地で培養した場合とで性質 (性状) が異なる”というご質問ですが,性状が変化すると考えられるのは細菌の形態,特に配列ではないかと考えられます。Streptococcus
mutansに限らず, Streptococcus属の細菌は, 唾液中などでは一方向に分裂してその名のとおり長い連鎖状の形態をとることが多いと思います。しかし血液寒天培地に発育した集落をグラム染色すると,
連鎖が短いかほとんど認められないことも少なくありません。一般的に液体培地や半流動培地の方が固形
(寒天) 培地より長い連鎖を作りやすい傾向があると思います。同じ連鎖球菌の感染症であっても,
液状で粘性の少ない材料中では連鎖しやすく,膿性で粘着性の強い材料中では連鎖があまり認められないことが多いと思います。また集落形態については,ご存知と思いますが,
白糖を含むMitis-Salivarius 寒天培地に発育すると,非水溶性の菌体外グルカンを産生して特徴的な粘着性のある集落を形成しますが,白糖を含まないその他の寒天培地や液体培地では当然性状は異なってくると考えられます。その他の性状や参考文献については,この質問箱の過去の回答[http://www.jarmam.gr.jp/situmon/streptc.html]の中に記載してありますので参照して下さい。
(公立玉名中央病院・永田 邦昭)
【質問者からのお礼】
ご回答をいただき, ありがとうございました。具体的な例を示していただいたので,
非常に分かりやすく参考になりました。培養形式 (液体, 寒天), または培地の組成によって微生物が影響を受け,
性状が変化するということを念頭においた上で実験を行っていきたいと思います。今後とも,
よろしくご指導のほどお願いいたします。
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