06/06/27
■ 薬剤感受性試験におけるディスク法
【質問】
 以前よりこのサイトにて勉強させていただいております。今回は, 薬剤感受性検査について教えていただきたいことがあります。

(1) 別の方から「MIC法とディスク法について」の質問で, 『最近ではディスク法の価値も見直され, 様々な耐性菌の検出にはディスク法の方が有用, 有効である場合も多々あります』[http://www.jarmam.gr.jp/situmon2/mic-disk.html]と回答されていらっしゃったのですが, 具体的にはどのような場合があるのでしょうか???

(2) また, 菌種同定・耐性菌確認試験の条件より「MIC法が強く推奨される」もしくは「MIC法でなければいけない」といった場合はあるのでしょうか???

(3) ESBLやBLNARなどの耐性菌確認試験の際にディスク法を用いた場合, 注意点などがありましたらご教授お願いいたします。

【回答】
(1) 一番端的な事例が, Clinical and Laboratory Standards Institute (CLSI) の勧告 (M100-S16)にあるcefoxitinディスクによるmecA関連のブドウ球菌検査です。この試験方法はディスク法に限定されています。オキサシリンに対するMIC測定と比べ, コアグラーゼ陰性ブドウ球菌で特に特異度 specificityに優れるとされています (オキサシリン感性菌株の判定がより正確である)。その他にも, 試験菌株のpurity (純培養の如何) の確認や酵素などの阻害薬, 相乗効果をもつ組み合わせの試験も簡単に行うことができる優位性があると考えます。

(2) 最近 (2006年5月) CLSIでapproveされたM45-Aを参照ください。比較的稀な菌種で薬剤感受性試験が必要になった場合の対応方法が勧告されています。微量液体希釈法でのMIC測定のみが採用され, ディスク法は“不可”となった菌種の一覧が掲載されてます (Moraxella catarrhalisListeria monocytogenesをはじめ, バンコマイシン耐性のPediococcus, Leuconostoc, Lactobacillusなどがあげられています)。

(3) ESBL, BLNARを含め, すべての試験は, 定められた試験方法の遵守と正しく試験されていることを保証する精度管理が必要です。これらのことが確認されれば, 偽陽性, 偽陰性は皆無 (ゼロ) ではないものの, “ベストを尽した”と言えます。特に, ESBLのディスク法では正確にクラブラン酸を添加したディスクの調製, BLNARでは品質保証の難しいHTM寒天培地の管理に注意が必要でしょう。

(琉球大学・山根 誠久)

【質問者からのお礼】
 いつもながら, 大変詳しく丁寧なご回答ありがとうございました。CLSI勧告文, 精度管理, 品質保証の重要性が再認識できました。特に精度管理は難しいテーマですが, 勉強したいと思います。ありがとうございました。


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