09/08/04, 17
■ カンピロバクターの増菌、保存について
【質問】
 はじめまして。貴研究会ホームページを見つけ, いつも参考にさせていただいております。大学でカンピロバクター菌について勉強しているところです。

質問は2つです。

(1) プレストン増菌培地での増菌について
 培地の説明書 (関東化学) には「好気条件下で42℃, 24時間培養する」と記載されていますが, 微好気性のカンピロバクターが好気条件で増えるのでしょうか??? スクリューバイアルにキャップをした状態での好気条件下だと, 実際には微好気状態に近くなるということでしょうか。

(2) 純培養したコロニーの保存方法
 CCDAなどに塗抹して, 疑わしいコロニーがあった時, 純培養して好気/微好気下発育テストをすると記載してあります。仮に微好気培養で発育した場合, いろいろな同定試験をすることになりますが, この同定試験を行っている間, 元の純培養したコロニーはどうやって保存すればよいのでしょうか??? 平板寒天培地では, 乾燥に弱いのですぐに死んでしまうそうですが, 同定試験が終わるまではそのまま微好気条件下で37℃で保存するのか, あるいは冷蔵庫へ入れてしまえばよいのでしょうか??? またその場合 (冷蔵保存), 何日位菌は生きていられるのでしょうか???

 初歩的な質問で恐縮ですが, 文章で書かれたことを実際にやろうとすると, わからないことばかりで困っています。どうかご教示いただきますよう, よろしくお願いいたします。

【回答】
(1) カンピロバクター属(Campylobacter)は現在, 30以上の種が存在しています。各菌種の生育にはガスに対する要求は多少相異があるものの, ほとんどの菌種は微好気性_嫌気性で, 大気中では生育できません。発育には3_15%の酸素, 5%以上の炭酸ガス(CO2)および湿潤の環境が必要です。また, 培養の際に85%くらいの窒素ガスを与えて培養する菌種も少なくないです。スクリューバイアルにキャップをした状態は, カンピロバクターの生育に必要な微好気状態とは違います。また, OXOID社のプレストン培地に関する説明も明確に記載しています[http://www.kanto.co.jp/rinsyo/pdf/107.pdf]。また, 微好気性菌の培養については下記を参考してください。
http://www.jarmam.gr.jp/situmon3/helicobacter-p-kankyo.html

(2) 単離されたカンピロバクターと思われるコロニーの一時保存については, カンピロバクターは培地上での生存期間が短く, 乾燥にも弱いので, 培地継代保存は不適です。冷蔵保存は菌種による差がありますが, 1週間しか生存できない菌種も存在します。同定している間の保存なら, 集めた菌を10%の脱脂乳に加え, −20℃以下 (できれば−50_−80℃) で保存したほうが良いと思います。

(テクノスルガ・ラボ 立里 臨)


【質問者からのお礼】
 お礼が遅くなって大変失礼しました。こちらの初歩的な質問にご返答いただき, ありがとうございました。カンピロバクターの増菌, 一時保存について理解でき, 感謝しております。ただ, 増菌における微好気培養についてですが, 関東化学のプレストン選択増菌培地の説明書[http://www.kanto.co.jp/rinsyo/pdf/098.pdfには「好気条件下」で42℃, 24時間培養すると記述してあるのが気になっています。これは別途関東化学に問い合わせてみます。この度はどうもありがとうございました。


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