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【質問】
はじめまして。貴研究会ホームページを見つけ, いつも参考にさせていただいております。大学でカンピロバクター菌について勉強しているところです。
質問は2つです。
(1) プレストン増菌培地での増菌について
培地の説明書 (関東化学) には「好気条件下で42℃, 24時間培養する」と記載されていますが,
微好気性のカンピロバクターが好気条件で増えるのでしょうか??? スクリューバイアルにキャップをした状態での好気条件下だと,
実際には微好気状態に近くなるということでしょうか。
(2) 純培養したコロニーの保存方法
CCDAなどに塗抹して, 疑わしいコロニーがあった時, 純培養して好気/微好気下発育テストをすると記載してあります。仮に微好気培養で発育した場合,
いろいろな同定試験をすることになりますが, この同定試験を行っている間, 元の純培養したコロニーはどうやって保存すればよいのでしょうか???
平板寒天培地では, 乾燥に弱いのですぐに死んでしまうそうですが, 同定試験が終わるまではそのまま微好気条件下で37℃で保存するのか,
あるいは冷蔵庫へ入れてしまえばよいのでしょうか??? またその場合 (冷蔵保存),
何日位菌は生きていられるのでしょうか???
初歩的な質問で恐縮ですが, 文章で書かれたことを実際にやろうとすると,
わからないことばかりで困っています。どうかご教示いただきますよう, よろしくお願いいたします。
【回答】
(1) カンピロバクター属(Campylobacter)は現在, 30以上の種が存在しています。各菌種の生育にはガスに対する要求は多少相異があるものの,
ほとんどの菌種は微好気性_嫌気性で, 大気中では生育できません。発育には3_15%の酸素,
5%以上の炭酸ガス(CO2)および湿潤の環境が必要です。また, 培養の際に85%くらいの窒素ガスを与えて培養する菌種も少なくないです。スクリューバイアルにキャップをした状態は,
カンピロバクターの生育に必要な微好気状態とは違います。また, OXOID社のプレストン培地に関する説明も明確に記載しています[http://www.kanto.co.jp/rinsyo/pdf/107.pdf]。また,
微好気性菌の培養については下記を参考してください。
[http://www.jarmam.gr.jp/situmon3/helicobacter-p-kankyo.html]
(2) 単離されたカンピロバクターと思われるコロニーの一時保存については,
カンピロバクターは培地上での生存期間が短く, 乾燥にも弱いので, 培地継代保存は不適です。冷蔵保存は菌種による差がありますが,
1週間しか生存できない菌種も存在します。同定している間の保存なら, 集めた菌を10%の脱脂乳に加え,
−20℃以下 (できれば−50_−80℃) で保存したほうが良いと思います。
(テクノスルガ・ラボ 立里 臨)
【質問者からのお礼】
お礼が遅くなって大変失礼しました。こちらの初歩的な質問にご返答いただき,
ありがとうございました。カンピロバクターの増菌, 一時保存について理解でき,
感謝しております。ただ, 増菌における微好気培養についてですが, 関東化学のプレストン選択増菌培地の説明書[http://www.kanto.co.jp/rinsyo/pdf/098.pdf]には「好気条件下」で42℃,
24時間培養すると記述してあるのが気になっています。これは別途関東化学に問い合わせてみます。この度はどうもありがとうございました。
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