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【質問】
当院でもようやく血液培養2セットを推奨し, マニュアルに詳細を掲載することになりました。血液培養2セット採血の詳細について教えてください。
“採血間隔を開けないで採血するのか, 15分あけるかどうか”
こちらの質問箱で「1回目の穿刺で血流に混入した雑菌が主に肝臓のクッパー細胞によって取り込まれ,
血流から完全に除去されるまでの時間を考慮 し15分間隔を開ける[http://www.jarmam.gr.jp/situmon2/ketsueki-baiyo2.html]」というお話がありましたが,
CLSIでは,「間歇性の菌血症」が最も一般的であり, 血流から15〜30分以内に菌が排除され再発時期を予測できない為,
検出率を上げるためには間隔を置かないとなっています。どちらもなるほどと思ってしまい,
判断に困っています。アドバイスいただけないでしょうか。
【回答】
現時点で明確に回答するのが難しい質問です。その理由は, CLSIがM47-Aとして血液培養の勧告法を提唱してきたからです。それ以前は,
なんの疑問もなく当たり前の標準的採血法として採用されていたものが検証され直されたからです
(EBMの影響???)。採血の間隔についてCLSIは, 「これまで30〜60分間の間隔を置いて採血する方法が“一般的に”行われて来たが,
今日ではその効果はあまりないと考えられている (4頁 5.1 Timing of Blood
Cultures)」と記載し, Liらの文献 (J Clin Microbiol 32: 2829〜31, 1994)
を引用しています。彼等の文献を読んで注意して欲しいのですが, (1) 雑菌混入率が3%
(雑菌混入と判定されたCNSの81%を含め・・・我が国での雑菌混入率はこれよりはるかに高い筈),
(2) 成績の解釈の対象が178件の陽性 (これまで常識と信じられてきた採血方法をくつがえす程の結論を得るのには少ない)
という2点です。血液培養では, 陽性数が分母 (検査数) に比較して極端に少なくなるため,
なかなかEBMを満足させる程のデータを集めるのが困難なのです。とすると科学者の一人として論理力と想像力が求められることになります。以前に回答した“血流から完全に除去されるまでの時間を考慮し15分間隔を開ける
(本当は30〜60分開けたかったのですか, 日本ではそれは到底無理だろうということで15分に妥協した経緯があります)”という考えは今でも正しいと考えます。が,
実際には肘静脈から注入された雑菌は秒から分単位で血流から消えていく (循環時間の測定検査を思いだしてください)
と思われます。従って, 可能な時間, 採血間隔を開けてくださいというのが現在の私の意見です。
(琉球大学・山根 誠久)
【質問者からのお礼】
丁寧な返答ありがとうございます。参考にさせていただきます。
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