08/03/28,31
■「局方 第一追補 微生物限度試験法」でのAspergillus niger
【質問】
 ●●県薬剤師会医薬品検査センターの■■と申します。いつもこの質問箱で勉強させていただいております。今日は, 「局方 第一追補の微生物限度試験法」について質問いたします。どうぞよろしくお願いします。

(1)「4.05 微生物限度試験法」の接種菌液の菌数測定
 「4.05 微生物限度試験法」の培地性能及び測定法の適合性で, 試験菌調製の項に, Aspergillus niger をサブローブドウ糖寒天培地上で25℃, 7日間培養したあと, pH7.0のペプトン食塩緩衝液で試験菌懸濁液を調製するとあります。例えば, 「JISZ2911かび抵抗性試験法」にあるような, 胞子懸濁液の調製方法が局方や追補に明記されていないため, 菌糸と胞子の混ざった形の菌糸&胞子懸濁液を使用して「培地性能試験」や「製品存在下での測定法の適合性」試験を実施すると理解しました。この場合, 血球計算盤で菌液中の菌数を測定する時, 胞子や色々な長さの菌糸を一緒にして測定することになると思うのですが, なにかおかしいように思います。このような場合, 特に明記されていなくても, 「JISZ2911かび抵抗性試験法」に従って, 菌糸を除いた胞子懸濁液の状態にして胞子数を血球計算盤で測定するのが当たり前なのでしょうか???

(2)「4.05 微生物限度試験法」の接種菌液の胞子と菌糸
 また, 同じ試験菌調製の項に,「Aspergillus nigerの栄養型細胞の新鮮懸濁液を調製して希釈する代わりに, 胞子懸濁液を調製し, 接種菌液として使用できる」とあります。Bacillus subtilis の芽胞懸濁液の調製方法は注意書に詳細に示されておりますが, Aspergillus niger については一切, 調製方法が示されておりません。このような場合も, 特に明記されていなくても, 「JISZ2911かび抵抗性試験法」に従って, 菌糸を除いた胞子懸濁液を調製するのが当たり前なのでしょうか???

(3) 胞子懸濁液の安定性
 またBacillus subtilis の芽胞懸濁液は, 冷蔵庫で1年間安定と示されているのですが, Aspergillus nigerの胞子懸濁液については示されておりません。JISZ2911には, 調製した胞子懸濁液は24時間以内に使用するように書かれております。しかし, 第一追補の文面からは, 2〜8℃で保存すれば, もっと長い間安定した胞子数のまま保管でき, 従って一度調製した胞子懸濁液も, 冷蔵庫で保管することで少なくとも6ケ月は使用できるように思いました。

 培地性能試験のための菌懸濁液調製にはとても手間隙かかります。そのため, 少しでも日々の試験検査が効率的に実施できないものかと模索している所です。

第一追補の内容をどのように理解したらよいのでしょうか。教えてください。

【回答】
(1)「4.05 微生物限度試験法」の接種菌液の菌数測定ですが, 質問者は血球計算盤にこだわっていますが, 胞子は血球より小さくて数えるのが困難です。4.05の「I.3 生菌数測定法」に記載されているように, メンブランフィルター法またはカンテン平板法を用いるのが通常です。

(2)「4.05 微生物限度試験法」の接種菌液の胞子と菌糸についてですが, 一般的には胞子液を寒天培地から調整する時, 寒天や菌糸を取り除くために粗いメッシュ状のものでろ過します。[http://www.jarmam.gr.jp/situmon3/aspergillus-niger.html]を参考にして下さい。

(3) 胞子懸濁液の安定性についてですが, 回答者の経験では胞子液を冷蔵庫に保管した時, 6ヶ月後でも充分に培地性能試験に使うことができました。使う前に胞子液を観察して, “ふわふわしたもの”を認めた時は使うのを止めた方が無難です (菌数が違ってくるため)。通常は容器を攪拌すると, “さらさら”した均一の黒い液体のように見えます。

(日水製薬・小高 秀正)


【質問者からのお礼】
 ていねいなご回答ありがとうございます。やはりカビは菌糸を取り除いた胞子懸濁液なのですね。ご紹介くださった他の質問者の回答も参考にしながら, ル−チン化の方法を探って行きたいと思います。ありがとうございました。今後ともご指導, ご鞭撻の程, よろしくお願い申し上げます。


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