07/05/07
■ 胸水の培養検査
【質問】
 いつも研究会の「質問箱」を拝見し, 参考にさせて頂いております。胸水の培養検査についての質問なのですが, 当院では滅菌試験管によって提出された検体を:

(1) グラム染色鏡検
(2) 血液寒天, チョコレート寒天, マッコンキー寒天, GAM半流動での培養
(3) 膿胸の場合は嫌気培養を追加

といった方法で実施しております。施設によって選択する培地等の差はあると思うのですが, 上記の様な方法で, 検体から直接的に画線培養を実施する方法と, 血液培養に用いるカルチャーボトルで検体から増菌を行う方法もあると思うのですが, 検体の採取量などにもよるとは思うのですが, どちらの方法を選択するのが良いでしょうか。また, 使い分けをするような場合があれば, お教え頂けないでしょうか。よろしくお願い致します。

【回答】
 基本的に正しい検査手順で検査を実施していると考えます。液体培地で増菌培養を行うか否かという点ですが, グラム染色の結果がその分岐点となります。グラム染色でなんらかの菌体が観察されれば, 数千個の細菌が検体に含まれている訳で, 検体を直接, 寒天培地に接種, 培養することで, 翌日には純培養が得られます。液体培地を用いる増菌培養では, 濁った培地からさらに分離培養が必要になりますから, 迅速性に欠けることになります。最小検出限界では液体培地が優れますが, 最終的な菌種同定, 薬剤感受性試験を含めた検査全体の迅速性では寒天培地が優れるということになります。これらふたつの方法のいずれを選ぶかとなると, 検体に含まれる菌量が決定的な要因となります。グラム染色で観察できる程の菌量であれば, 迅速性を優先させて寒天培地に接種します (混合感染の可能性を考えて, 念のために液体培地にも接種しますが)。

 血液培養ボトルへの接種で気をつけなければならないのが, サプリメントの添加です。血液培養用の培地はヒト血液が添加されるという前提で調製されていますから, 血液成分の極少ない胸水を接種する場合には, 血液成分に代わるサプリメントの添加が必要となります[http://www.jarmam.gr.jp/situmon2/kyosui-fukusui.html]。

(琉球大学・山根 誠久)

【質問者からのお礼】
 お忙しい中, 丁寧な解説を本当にありがとうございました。また, 研究会を通して質問させて頂くことも多いかと思いますが, よろしくお願いいたします。


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