【質問】
●●工業の■■と申します。ニキビ菌・水虫の防菌効果を調べる方法について教えてください。
(1) ニキビ菌・水虫の購入方法
(2) ニキビ菌・水虫の培養法方法 (使用培地, 購入会社, 培養条件)
(3)ニキビ菌は嫌気培養だと思います。嫌気培養をしたことがないので, 注意点を教えてください
(設備, 使用機器)
(4) 化粧品原料のニキビ菌の防菌効果を調べる方法を教えてください。
(5) 水虫菌の防菌効果を調べる方法を教えてください。
非常に初歩的な質問で申し訳ございませんが、よろしくお願いします。
【回答】
・ニキビ菌について
ニキビ菌の正式な名前はPropionibacterium acnesです。嫌気性菌で,
培養はちょっと難しいですが, 一般の実験室で培養不可能ではありません。
(1) 購入方法: 水虫菌と同じく国内の理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室
(JCM) に注文すれば入手できます。
[http://www.jcm.riken.go.jp/JCM/JCM_Home_J.html]
(2) 培養方法
培地: GAM寒天またはEG寒天 (組成はJCMのホームページを参考)
嫌気条件: アネロパウチ・ケンキシステム (三菱ガス化学) を利用すればそれほど難しいことではないはずです。初めて嫌気性菌の取り扱いをするのでしたら,
下記の「質問箱」の回答を参考にして, 勉強してから実験した方が無難です。
[http://www.jarmam.gr.jp/situmon2/kenkisei-baiyo.html]
(3)“化粧品原料のニキビ菌の防菌効果”というのは抗菌活性のことでしょうか。抗菌活性有無の検証には色々な方法がありますが,
簡単なペーパーディスク法もその一つです。均一に菌を塗抹した寒天プレートに抗菌活性がある液体をしみ込ませたペーパーディスクを載せて培養します。抗菌性がある物質は周囲に拡散し,
その影響でペーパーディスク周囲の菌の生育ができなくなります。ディスク周囲の菌が生育しない範囲
(円形) を菌発育阻止円といいます。阻止円の直径の大きさで抗菌活性の強弱の程度を評価します。
・水虫について
水虫 (水虫菌) とは, 人間のケラチンと呼ばれるたんぱく質を栄養源として皮膚に感染する菌
(白癬菌) を指します。人体の感染部位により, 名称および主要起因菌種も異なりますが,
その90%以上を占める菌種としてTrichophyton rubrumとTrichophyton
mentagrophytesの2種が知られています。
(1) 購入方法
国内の菌株保存機関から購入することが可能です。代表的な微生物菌株保存機関としては、
・(独) 製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部生物遺伝資源部門 (NBRC:
http://www.nbrc.nite.go.jp/)
・(独) 理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室 (JCM) があります。
(2) 培養方法 (使用培地, 購入会社, 培養条件)
Trichophyton rubrumとTrichophyton mentagrophytesの培養は極一般的な寒天培地を用いた好気培養で可能です。使用培地には真菌用培地として汎用されている「サブロー・グルコース寒天培地」などが使用されています。これらの培地は寒天入りの粉末として国内の試薬メーカーから購入することができます。また,
培養は室温または25_30℃で約1 (_4) 週間程の期間で行われています。もちろん,
病原菌ですから菌の取り扱いには注意してください。
(3) 水虫菌の防菌効果を調べる方法
水虫菌の防菌効果を調べる公定法というのはないようです。通常のカビの抗菌性試験法
(ペーパーディスク法や最少発育阻止濃度試験法など) が用いられています。基本的にはニキビ菌のところで述べたことと同様ですが,
試験法の詳細は高鳥ら1)などの文献を参考にしてください。最近では繊維製品における白癬菌の抗菌性試験法が住友ら2)や西村3)によって紹介されています。
〔三興文献〕
(1) 高鳥浩介 監修: かび検査マニュアル カラー図譜. テクノシステム, 2002.
(2) 住友倫子, 他: 繊維製品の抗真菌性試験. 防菌防黴 34: 141〜147, 2006.
(3) 西村民男 監修: 誰にでもわかる抗菌の基礎知識. テクノシステム, 1999.
(テクノスルガ・ラボ・喜友名 朝彦)
【担当者からのコメント】
今回, 入手して検討されようとしている細菌と“かび”は, いずれもヒトに対する病原性をもつ微生物です。菌株を購入,
分与される場合には, その施設が当該微生物を安全に取り扱うのに必要な環境と知識,
経験を準備しているのか証すことが求められます (法律的にも, 倫理的にも)。特に“かび”の培養では,
環境中に多数の胞子を放出して汚染が拡がるので, 充分な注意と経験, 専門知識が求められます。
(琉球大学・山根 誠久)
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