08/01/28
■ 尿グラム染色でグラム陽性桿菌
【質問】
 いつも勉強させて頂いています。199床病院の検査技師です。細菌検査は外注ですが, 至急の場合, グラム染色と抗酸菌染色は院内にて実施しています (同時に外注もします。点数は1回分のみ算定)。

 先日, 尿検体で院内にてグラム染色を実施したところ, 好中球とグラム陽性桿菌を多数認めました。はっきりとした貪食はありませんでしたが, 扁平上皮細胞もほとんどなく, 尿の採取状態 (検体の品質) も悪いという感じではありませんでした。菌の形体よりCorynebacteriumを疑いましたが, 外注結果ではGPR (グラム陰性桿菌) (3+) で, 培養は「陰性」でした。抗菌薬使用前の尿検体でしたが, 上記結果が返ってきました。どのようなことが考えられますか??? ご教授ください。よろしくお願いします。

【回答】
 尿から分離されるグラム陽性桿菌の意義については, 既にこの「質問箱」で回答してあります[http://www.jarmam.gr.jp/situmon3/nyou-gram.html]。参照してください。グラム染色の所見から, 病原菌の可能性のあるCorynebacteriumを疑った訳ですから, 培養「陰性」の結果に納得できないのは当然だと思います。

 細菌検査を外部委託している検査機関 (外注先) に大きな問題があると考えます。外注先の検鏡検査でもグラム陰性桿菌を認めている訳で, この顕微鏡検査で観察された細菌を“培養, 同定検査では無視した”としか考えられません。何故, 無視したのかは分かりません。彼等のマニュアルに従った対応だと推測できます。常在菌と一方的に即断して捨てた (グラム陰性桿菌は同定対象としない), 彼等が尿検体で通常用いている培地, 培養方法で菌発育しなかった等々・・・私が勧めるのは, 是非, その外注している検査機関に, 具体的な検査方法 (培地, 培養方法, 同定方法, 薬剤感受性試験の対象菌種. 結果報告の方法等々) についてより詳細に確認することです。外注した検体がどのように検査されているのか確認することです。このあたりが“甘い”というのが私の意見です。車や物を購入する時は, いろいろ性能を確認してから購入する筈ですが, 検査の外注では, 尿検体, 喀痰検体とか, 単に診療報酬に則して契約され, その検査の方法については外注先まかせという現状です。臨床検査技師として, 専門的な立場から, 契約先の評価をして, それから本契約するようにしては如何でしょうか。

(琉球大学・山根 誠久)


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