09/03/26, 29
■ pH 5.7の普通ブイヨン (その2)
【質問】
 ●●県の食品衛生関係の検査センターで細菌検査をしている■■と申します。先日, 培地のpHについてご回答いただき有難うございました[http://www.jarmam.gr.jp/situmon3/ph5.html]。今回は, セレウス菌の検査においていくつか質問があるので教えていただきたいと思います。

(1) pH 5.7での発育能試験において, “厳密に”普通ブイヨンをpH 5.7にする必要があるのか, それとも, pH試験紙を使用して“大体で”合わせてしまっても良いのか。

(2) 指針には「生化学的性状試験の6項目のうち50℃での発育能とグルコースからのガスと酸の産生能を除いた4項目の試験が陽性であれば, B. cereusと判断することが出来る」とあるが、6項目すべて検査をする必要があるのか。

(3) 嫌気性寒天培地上での発育能について, 嫌気性寒天培地ではなく, 例えばNGKG培地または普通寒天培地等に塗抹し, 嫌気培養を行うという方法ではいけないのか。

以上の点について、回答をお願いいたします。

【回答】
(1) Bacillus cereusがサンプル中に存在しているか否かの定性試験なので, 厳密に検査指針に従って実行すべきです。普通に菌の増殖を目的とする場合の培地のpH条件は±0.2程度の許容範囲がありますが, 同定を目的とする場合の各pH条件下での生育試験では, 厳密に指定されたpH条件に調整しなければなりません。pHの調製には“pHメーター”の使用を勧めます。

(2)「食品衛生検査指針」のセレウスの同定に関する記述には6項目の生化学性状試験があります。セレウスの生化学的特徴はカタラーゼ反応陽性, VP試験陽性, 嫌気条件およびpH5.7で生育します。しかし, 50℃で生育せず, グルコースの酸化はアンモニウム塩および酵母エキスを添加した培地では陽性を示しますが, ガスは産生しません。指針に「生化学的性状試験の6項目のうち50℃での発育能とグルコースからのガスと酸の産生能を除いた4項目の試験が陽性であれば, B. cereusと判断することが出来る」の意味は6項目の内, 4項目は陽性, 残りの2項目は陰性と言う意味ではないでしょうか。従って, 6項目すべてを実施する必要があります。

(3) 嫌気性寒天培地には還元剤としてチオグリコール酸ナトリウムおよびホルムアルデヒドスルフォキシル酸ナトリウムを含んでいるので, より嫌気環境の厳しい培地です。正確な結果を得るためには, 指針に従って実施すべきだと考えます。

(テクノスルガ・ラボ 立里 臨)


【質問者からのお礼】
 詳細なご回答, 有難うございました。「食品衛生検査指針」は, 検査方法・使用培地が明記されているようで, 実は実際に検査を行おうとすると, 初めての人間には細かな所が解らないと痛感しております。なので, すぐに質問が出来, 回答がいただけるこの場があることを, 検査に携わる者として本当に感謝しています。


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