07/07/31
07/08/07
■ 細菌数算定の計算式
【質問】
 食品衛生検査施設で食品細菌を検査しております。いつも「質問箱」を参考にさせていただいております。本日は細菌数算定方法について, 他の方も質問されているようですが, 特に以下の点について教えていただければと思います。

 食品衛生検査指針 (微生物編) 2004において, 細菌数算定の方法が示されていますが, 1平板に30から300の集落が2段階にまたがる時の両者の比が2以下の場合, 2004年版以前には, 両者の平均をとるようになっていますが, 2004年版からは計算式となっています。この計算式の出典と, 変更になった経緯を教えていただきたいと思います。

【回答】
 2004年版以前と2004年版の内容は同じことが書かれています。2004年版以前として1990年版について見ますと, 参考文献に米国公衆衛生協会から出版されている「Compendium of methods for the microbiological examination of food (1984)」が記載されています。2004年版の参考文献にも, 米国公衆衛生協会から出版されている「Compendium of methods for the microbiological examination of food、4th ed. (2001)」が記載されています。さらに, ここに引用されている文献を見ますと, 米国公衆衛生協会から出版されている「Standard Methods for the Examination of Dairy Products」が記載されていて, この内容は「International Dairy Federation. Milk and milk products: enumeration of microorganisms _ colony count at 30℃. Provisional IDF standard 100A. Brussels, Belgium: Intern. Dairy Fed.; 1987」と「Niemela, S. Statistical evaluation of results from quantitative microbiological examinations. Report n. 1, 2nd ed. Uppsala, Sweden: Nordic Committee in Food Analysis; 1983」を参考にしています。1990年版と2004年版の共通の執筆者は小久保彌太郎氏, (社) 日本食品衛生協会技術参与でIDFの微生物部会で委員を務められている先生です。

 計算式に関しては「Standard Methods for the Examination of Dairy Products」で参照することが出来ます。質問者は「変更」と記載していますが, 1990年版の文章を2004年版では具体的に数式で表しただけで,「変更」ではありません。

(日水製薬・小高 秀正)

【追加質問】
 ご回答ありがとうございました。大変参考になりました。しかし, 回答を得て, 疑問が2点でてきましたので, 再度質問させていただきたいと思います。

〔質問1〕
 「変更ではない」とのことですが, 実際に1990年版に従って算定する場合と, 2004年版の計算式により算定する場合では, 細菌数が異なった結果となることがありましたので, 疑問に思い, 質問させていただきました。細菌数の検査自体が, あくまでも概算での数値ですので, 誤差の範疇と考えてよろしいのでしょうか??? 成分規格で規定されている食品のなかで, 冷凍食品においては, このようなケースで基準値前後の数値が出てくると思われます。

〔質問2〕
 また, 質問箱で公開されているQ&Aに「生菌数の算定について」[http://www.jarmam.gr.jp/situmon2/seikinsu-santei2.html]がありますが, この質問者が書いているように, 食品衛生検査指針微生物編2004の120頁に算出方法が記述されていて, 質問者の例では, 10倍希釈の293と100倍希釈の45を採用して, ii) のルールに則り:

N= ΣC/(n1+0.1n2)×d
 = (293+45)/1.1×10
 = 3072.7
 ≒ 3.1×10^3
となり, 質問者の云うとおりの計算結果で出るように思われます。しかし, 回答者は「Compendium of Methods for The Microbiological Examination of Foods」

 3rd ed. (American Public Health Association) の第4章“Colony Count Methods”にある表1の内容を解釈して質問者へ回答しています。表1の内容には, 二枚ずつ測定して, 片方が25〜250に入らなかった時の計算方法が示されています。例えば, 239と328という結果を得た場合は, 平均を計算して280にするということや, 100倍希釈で228, 240, 1000倍希釈で28, 23という時には, すべてを計算して24,000にするということです。ですから, 「今回の質問者の計算方法は上記の書物の内容から計算しますと“間違い”です」となっております。30個未満の集落や300以上の集落について, 細菌数算定に採用すべきかどうか, 教えていただけないでしょうか???

 勉強不足の上, 大変図々しく, また貴重な時間を申し訳ありませんが, よろしくお願いします。

【回答】
〔回答1〕冷凍食品の無加熱摂取冷凍食品は, 細菌数が検体1 gramにつき100,000個以下となっています。質問者が, もし99,000個という菌数結果がでた場合, どの様に判断されるのでしょうか。合格ですか??? 不合格ですか??? 食品衛生の考え方は「疑わしきは罰する」です。また, 質問者の会社では, 自社の品質管理規定はないのですか。回答者が質問者の立場であれば, サンプリング数を増やし, 再度品質試験を行い, 同じような結果がでたら不合格とします。

〔回答2〕[http://www.jarmam.gr.jp/situmon2/seikinsu-santei2.html]の(2) と関連しての(3)を参照してください。蛇足ですが, 検査はサンプリング, 調製, 測定, 結果判定, 報告という一連の流れ, すべてを含みます。今回, 質問者は結果判定だけの質問でしたが, すべての工程を再確認することをお勧めします。

(日水製薬・小高 秀正)


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