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【質問】
●●大学生の■■と申します。
海洋細菌 (フラボバクテリウムの1種) を−80℃で凍結保存したいと考えております。その際,
凍結保護剤として20%スキムミルクを使用したいと思い, スキムミルクを滅菌したところ凝固してしまいました。凝固しない方法を探していたところ,
ここの掲示板に同じような質問[http://www.jarmam.gr.jp/situmon/kinkabu_reitou.html]がありましたので、参考にさせていただきましたが,
また凝固してしまいました。何か原因があるのでしょうか??? よろしければ教えていただけないでしょうか???
参考までに滅菌した方法を下記に示します。
(1) 新品のスキムミルク (Difco製) 8 gramを滅菌海水40 mlに添加し, スターラーを用いて室温で十分に溶かす。
(2) (1)の溶液を, 1N NaOHを用いてpH 7.6に調整し, ねじ口試験管 (容量10
ml程度) に1.5 mlずつ分注する。
(3) (2)の溶液を, 115℃, 13分でオートクレーブする。
(4) オートクレーブ終了後, 70℃ぐらいになってから取り出し, 水で冷やす
(取り出す時点で既に凝固していた)。
【回答】
質問者は結果として“お豆腐”を作ったのだと思います。大豆 (植物蛋白)
の代わりにスキムミルク (動物蛋白) を、“にがり”として海水を使って・・・質問者の調製方法を沖縄の海水を使って再現してみました。海水溶解と蒸留水溶解のスキムミルクを1N
NaOHでpHを調整し, オートクレーブしました。蒸留水溶解スキムミルクはオートクレーブの後でも凝固は認めませんが,
海水溶解ミルクは滅菌後には凝固しました。この原因は海水に含まれる“にがり”が原因と推定し,
沖縄で市販している「にがり水」を同じように添加して滅菌すると凝固しました。質問者のスキムミルク凝固の原因は海水に含まれる“にがり”が原因です。“にがり”の主成分は塩化マグネシウムと塩化カルシウムで豆腐の凝固剤として用いられています。
保存する細菌は海洋細菌 (Flavobacteriumの一種) となっていますが,
海洋由来の細菌を保存する場合でも, ミルクの溶解液に特に海水を使用する必要はありません。Flavobacterium属の細菌は海水以外の自然環境にも生息する菌属ですから精製水溶解のスキムミルクで保存可能です。
(琉球大学・仲宗根 勇)
【質問者からのお礼】
回答いただきありがとうございました。また, お礼が遅くなりまして申し訳ございませんでした。ご教示いただいたとおり蒸留水を用いてオートクレーブしてみましたが,
やはり凝固してしまいました。ただ, pH 7.6でなくpH 7.0に調整した場合は茶色に若干変色しましたが,
凝固はしませんでした。どうも1N NaOHで調整し過ぎると凝固しやすいようです。PH
7でも問題ないと思いますので, 使用しようかと考えておりますが, 変色したのが少し気になっています。
【読者からの意見】
スキムミルクをオートクレーブ滅菌すると、しばしば褐変します。「褐変したスキムミルクは微生物保存用の保護剤として使用しないほうがよい」と言われています。その根拠は知りません。そこで,
スキムミルクの滅菌には古典的な滅菌方法である「間欠滅菌」を用います。さらに芽胞が残存していないことを確認するために,「間欠滅菌」したスキムミルクを35〜37℃のインキュベーターに入れておいてスキムミルクが凝固しないことを確認してから使用します。微生物保存を担当されていた技官の方から教わった方法です。間欠滅菌の具体的な方法は「微生物学実習提要」に解説されています。微生物保存の具体的な方法については,
根井外喜男 (編): 微生物の保存法. (東京大学出版会, 1977) が参考になります。
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