金沢医科大学出版局・RV選書

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金沢医科大学出版局刊行物

 出版局は本学教職員の手になる各種学術書や教養書、出版局の企画書RV選書、学内で使用する教科書、教材、実習書、年史、業績集などを刊行しています。

2020-06-22

RV選書:

金沢医科大学はReverentia Vitae「生命への畏敬」を基本コンセプトとする書籍を「RV選書」として刊行している

良医を育てる :RV選書

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金沢医科大学理事長 小田島粛夫著
定価 (本体560円+税)/B6判232頁
発行 金沢医科大学出版局
発売 紀伊國屋書店
2001年9月1日発行
ISBN4-906394-27-2
在庫あり




《推薦の辞(抄)》
 この本は、著者の小田島粛夫先生が長年にわたって取組んでこられた「良医の育成」という大きな課題について、日ごろ学内あるいは学外の皆さんに話をされてきた内容を中心に、先生の考え方をまとめていただくという企画のもとに作成されました。
 今、金沢医科大学は創立三十周年を迎えようとしており、すでに新設の医科大学というイメージは払拭して、医育と医学そして医療の面で社会に貢献すべくフルに活動しております。創立以来30年を経過して、教授陣も二代、三代と代替わりし、教職員はどんどん若返りました。大学を巣立った卒業生は各地で活躍を続けており、すでにその二世が入学してくる時代となっています。したがって、創立の頃から大学の運営に大変な苦労をして来られた方々のほとんども大学を去られ、金沢医科大学が現在あるまでに築き上げられた過程を知る人も少なくなりつつあります。特に開学間もない時期には大学の管理運営体制の未熟さからの色々な混乱があり、運営を軌道にのせるまでに費やされた苦労や知恵の数々は計りしれないものがありました。
 小田島先生は金沢医科大学30年の歴史のとくに後半において、副学長、学長、そして理事長という主導的な立場で、その責任を一身に受け止めて大学の特に教育・研究面での改革を推進してこられました。改革の内容は本書に詳しく述べられておりますが、要約すれば、進歩しつづける医学・医療をどう学んでいくかという課題と、医の倫理に徹し、病気のみを治すのではなく病人を治せるような良医をどのようにして育てていくかという課題を中心とするものです。これらは金沢医科大学に限ったことではなく、世界中の医育機関が直面してきている課題でもありますが、金沢医科大学固有の問題点を含めて、それらを現実面で如何に解決していくかが大きな課題でした。改革ということは人がやらなかったことを実行することであって、大変な決断と勇気を必要とします。冒険的な挑戦も必要であり、それを行うには周到な検討と計画と実行力がなければ成功するものではありません。


 本書の内容は三部に分けられています。第一部は、良医の育成についての基本理念というか哲学というべきものを述べておられる、いわば総論となるものであります。第二部は、金沢医科大学の教育と研究面の30年の流れについて、先生の立場から事実を記録され、論評され、反省され、これから先への提言が述べられています。第三部は、折りにふれて話されたり書かれたりしたエッセイ類です。印象深く読み応えのあるものが多いと思います。いずれにも、先生の教育に関する哲学と新鮮な夢があり、価値観を共有できる考え方にうなずきつつ、惹きこまれていくのを感じられるものと思います。
 現在、金沢医科大学は、600名の医学部学生、約2,400名に近い卒業生を擁し、また、日々約1,500人の外来患者および約900人の入院患者の命をあずかって、良質の医療の推進、医学の新局面の開拓、そして良医の育成という公益性の大きい目標と役割を担う機関として、その責任を果たすべく、約1,700名の教職員が一体となって活動しております。わが国では私立大学というものは常に社会から厳しい評価の目で見られがちです。理由はいろいろあろうと思われますが、その中には運営にあたる哲学にイージーさが潜んでいてはならないという老婆心が働いていることも多いのではないでしょうか。そのような意味での厳しい評価にもしっかりと応えて社会的責任を全うしていることが確認されてはじめて、その存在意義が認められるものであると思っています。
 本書に記されているような大学創設期の厳しかった現実の歴史、それから立ち直った過程、そしてその基盤にある理念と哲学を、この書から読み取っていただければ、RV選書の一冊として本書を上梓した意図がかなえられるものと思っております。
(副理事長・出版局長 山下公一記)